京成電車が気になる

地底の歌」(1956年、日活)
監督野口博志/原作平林たい子/脚本八木保太郎名和宏/山根寿子/石原裕次郎/香月美奈子/菅井一郎/高品格/二本柳寛/坪内美詠子/美多川光子

石原裕次郎デビュー4作品目で、脇役である。チンピラで、対立相手のヤクザの親分を殺す鉄砲玉の役。この映画はヤクザの世界が舞台なのである。主演は名和宏と山根寿子。名和宏という俳優は初めて知った。葉山良二のような、鶴田浩二のような。フィルモグラフィを調べてみると、このあと東映の任侠物によく出ていた人らしい。
その名和宏が、いかさま博打の現場に出くわしたとき、片棒を担いでいた女(山根寿子)を忘れられず、のち再会して恋に落ちるという筋。山根は石原裕次郎の実の姉で、「おかる八」という名前のいかさま賭博師(菅井一郎)が旦那で相棒なのだった。石原裕次郎名和宏の組(二本柳寛が親分)とは対立する組のチンピラなので、名和と山根はいわば「禁断の恋」状態。
菅井一郎演じる「おかる八」の「おかる」とは博打打ちの隠語であると、その由来を名和が弟分の「びっくり鉄」高品格に説明する。仮名手本忠臣蔵のおかるのように、鏡のようなものに相手の花札の手札を映し、相棒に伝えるというわざ。
日本国語大辞典 第二版』には、盗人仲間の隠語として、二階とか、梯子、梯子を使った盗み方、簪・婦人という意味が出ているが、賭博の隠語としては項目がなく、鏡にまつわる隠語も見あたらない。梯子にせよ、鏡にせよ、「七段目」を踏まえたものであり、そのネーミングのセンスは風雅である。隠語辞典などには載っているだろうか。
石原裕次郎の恋人(香月美奈子)が高品格(卑屈さがいい)に騙され、飲み屋の女中として売り飛ばされてしまう。連れて行かれた先が成田で、京成成田駅や、駅から新勝寺までの参道の賑やかな風景が撮されている。京成成田駅の駅舎が寺院建築風になっているところや、いかにも大寺院の門前町といった祝祭的な参道の雰囲気がよく、まだ成田山にお参りしたことがないので、つい京成電鉄の時刻表を調べてしまった。青砥からだと特急に乗れば一時間程度で成田に着く。近いうちに詣でてみようかしらん。

地底の歌 [VHS]

地底の歌 [VHS]