起承転結が肝要

「用心棒」(1961年、東宝黒澤プロダクション
監督黒澤明/脚本黒澤明菊島隆三/撮影宮川一夫三船敏郎仲代達矢司葉子山田五十鈴東野英治郎河津清三郎山茶花究加東大介志村喬藤原釜足/太刀川寛/沢村いき雄/渡辺篤/藤田進/加藤武西村晃ジェリー藤尾中谷一郎夏木陽介羅生門綱五郎

もはや語るまでもない傑作だろうが、わたしは初めて観た。やはり面白い。ストーリーは単純なのだけれど、何と言っても起承転結がきちんと踏まえられているから物語に起伏があって、スリルとサスペンスに満ちている。最後までハラハラドキドキなのだ。用心棒 [DVD]
小説にしろ映画にしろ、どんな筋であっても起承転結というのは大事なのだということがよくわかる。起承転結、漢詩における絶句の構成を指す言葉であるが、小説・映画といった学芸百般に通じる作法であるというのが意味深い。
脇役の当て方も贅沢だし、意外性があって、黒澤監督でなければこういうふうにはならないだろうと思わずにはいられない。宿場で対立する賭博集団の一方の親方は河津清三郎だが、おどおどして凄味がないような役柄を河津に演じさせるのである。河津に対抗するのが山茶花究であり、こちらのほうが凄味がある。
しかも加東大介がちょっと知恵の足りない暴れ者なのだ(眉毛がつながっている!)。山田五十鈴河津清三郎の女房として計算高く、ジェリー藤尾は三船にあっさり左腕を斬られてしまうし、西村晃加藤武も一シークエンスだけの出演なのだが、それぞれ印象的な役柄である。最後に発狂してしまう宿場名主の藤原釜足といい、それぞれの役に必ず見せ場がある。見事なものだ。