ニュース映画というメディア

「ぶっつけ本番」(1958年、東宝・東京映画)
監督佐伯幸三/原作水野肇・小笠原基生/脚本笠原良三フランキー堺淡路恵子小沢栄太郎佐野周二仲代達矢吉行和子内田良平

報道カメラマン故松井久弥氏をモデルにした映画。フランキー堺が主人公を演じる。映画はフランキーが復員した場面から始まり、まもなく報道映画のカメラマンとしてバリバリと働き始める。彼らが持っているハンディで手回しのカメラは、16ミリカメラだろうか。
当時はニュース映画の時代で、撮り終えたフィルムを編集し、社員全員が試写室でこれをチェックしていた。映画のなかには、フランキーが遭遇(もしくは撮影)した場面という設定で、実際のニュース映画映像が取り込まれており(たとえば血のメーデー事件など)、その点興味深いものだと言えるかもしれない。あれは実際に松井氏が撮影したものなのだろうか。
当時は映像の主流がテレビへと移り変わる過渡期にあり、後輩の仲代達矢はテレビ局に転職してしまう。ニュース映画からテレビでのニュースへ、そんな時代の変り目が一人のカメラマンをとおして描かれていると言えよう。ついでに、仲代の恋人役吉行和子(可愛い!)はこの映画がデビュー作らしい。
フランキーは仕事のことになるとほかのことは頭に入らなくなるたちで、どんな危険もかえりみず他社はおろか同僚をも出し抜くような映像をとろうとする。憎めない、誰からも好かれるような人柄ではあるのだが、仕事ぶりについては批判的な人もいる。
ときには上司(小沢栄太郎佐野周二)から、君の映像には客観性がないとたしなめられることも。臨場感あふれる現場映像を撮ることばかりに気を取られ、それらの映像がいかなる状況にあるものなのかという説明がないのだ。
悲劇的な結末を迎える映画で、フランキー堺はこのような小さな幸福に包まれつつ悲劇的最期を遂げる人物を演じさせると何とも味わいがある。