2007年の読書―負のスパイラル

川の光超人高山宏のつくりかた (NTT出版ライブラリーレゾナント)ミステリと東京昨年一年間に読んだ本のなかで、印象に残ったものを下記に掲げる。このうち純粋な新刊で夢中にさせられた本をあげるとするなら、石上三登志『名探偵たちのユートピア―黄金期・探偵小説の役割』、重松清カシオペアの丘で』、堀江敏幸『バン・マリーへの手紙』、高山宏『超人 高山宏のつくりかた』、松浦寿輝川の光』、川本三郎『ミステリと東京』となる。
小説なら、松浦さんの『川の光』、ノンフィクションなら、高山宏さんと川本三郎さんの本がベストと言えようか。
総じて昨年は本に対する執着が薄まった年だった。絶対購入を決め楽しみにしていた新刊も刊行日必ず入手するといった執念がなくなり、また入手してもすぐ読んで感想をいち早くアップするような、もしくは買ったことを誇らしく書くような虚栄心がなくなった。
古本についても、巷の本好きの人びとの間で流行っているような古本に関する本は、買いはしても読む気が起こらず、古本屋も気後れして入ることがほとんどなくなった。入るとすればブックオフのみ。いままで好んで通っていたような古本屋も、昨年はほとんど足を踏み入れていないはずだ。
いままでの人生をふりかえってみると、これはバイオリズムの問題であるようだ。古本、いや書物全体の波が低調な時期にさしかかっている。本を読む時間が少なくなっていることが、書物もしくはそれを売る書店(古書店含め)への執着を薄めている。書店へ行かなくなれば、ますます本に対するアンテナの感度が鈍る。本に関する“負のスパイラル”に巻き込まれている。
ここから脱却するには、書店に入る、本を買うというより、ひたすら本を読んでそこから刺激を得ていくしかない。本を読んで、本を読む愉しみを思い出し、さらに新たな本を探し求める。そうすれば自ずと足は古本屋に向くだろう。(そしてこれは困るのだが)積ん読本も増えることだろう。
ここ数年購ったままで読んでいない本を積ん読の山から掘り起こし、「こんな本を買っていたのか!」という新鮮な喜びにひたることがしばらくつづくかもしれない。