2006-01-01から1年間の記事一覧

原作読後は印象も違う

4ヶ月まるごと成瀬巳喜男劇場@日本映画専門チャンネル(録画DVD) 「妻」(1953年、東宝) ※二度目 監督成瀬巳喜男/原作林芙美子/脚本井出俊郎/上原謙/高峰三枝子/丹阿弥谷津子/高杉早苗/中北千枝子/伊豆肇/新珠三千代/三國連太郎 前回→2004/4/18…

林芙美子と成瀬映画

林芙美子の長篇『茶色の眼』*1(講談社文芸文庫)を読み終えた。 この作品は、成瀬巳喜男監督の映画「妻」の原作である。また、川本三郎さんの『林芙美子の昭和』*2(新書館、旧読前読後2002/2/6条)にて、この作品が“サバービア文学”との関わりで論じられて…

常設展の素晴らしさ

常設展「松本竣介・野田英夫と周辺の画家たち」@大川美術館 特別企画展「都市と生活―生活圏へのまなざし」@大川美術館

第3 鉄ちゃんの楽園

昨日土曜日は、所用のため妻が日帰りで仙台に行ってきた。二人の子供の相手をするということで、長男は自分の自転車で、わたしは妻の座席付ママチャリを借り次男をうしろに乗せて、四つ木までサイクリングに出かける。 地図を携帯しなかったため道に迷い、そ…

市川崑のナンセンス喜劇に驚く

監督市川崑の映画たち@日本映画専門チャンネル(録画HDD) 「億万長者」(1954年、青年俳優クラブ・新東宝) 監督・脚本市川崑/脚本協力安部公房・和田夏十・横山泰三・長谷部慶治/木村功/久我美子/山田五十鈴/伊藤雄之助/加藤嘉/左幸子/岡田英次/…

「私の履歴書」の愉しみ方

経済というものに縁がなく、また関心もなく齢を重ねてきたため、日本経済新聞という新聞を購読した経験がない。同紙の人気シリーズと言えば「私の履歴書」を思い浮かべるが(というより、それしか思い浮かばないが)、今でも続いているのだろうか。 単行本に…

殿山泰司の祖国

読み終えてから数日経ってしまい、また読んでいた期間も数日間あったから、けっこう前の話になってしまうが、ある日のこと、夢に殿山泰司さんの本が出てきた。渡辺和博さんか蛭子能収さんかといったヘタウマ系のイラストが挿絵として添えられたエッセイ集を…

珍しい中村雅楽物長篇

創元推理文庫で今月刊行の予定となっている『中村雅楽探偵全集1 團十郎切腹事件』であるが、本日(11月15日)の時点でいまだ同社のサイトの「新刊案内」ではなく「近刊案内」にあるままで、書影もアップされていない。本当に今月出るのかしらん。 ところで『…

1961年の明朗と悲哀

デビュー50周年 石原裕次郎の軌跡@チャンネルNECO(録画DVD) 「あいつと私」(1961年、日活) 監督中平康/原作石坂洋次郎/脚本池田一朗・中平康/石原裕次郎/芦川いづみ/轟夕起子/宮口精二/滝沢修/小沢昭一/清水将夫/吉永小百合/細川ちか子/中…

本屋の二度覗き

坪内祐三さんの『本日記』*1(本の雑誌社)を読み終えた。 読み終えたあと、巻末にある初出情報を見て茫然としてしまった。この日記は『本の雑誌』の2001年10月号から2006年1月号まで連載されている。むろんこの日記が2001年からであるということくらい、本…

千秋実のピエロ

名画 the NIPPON@チャンネルNECO(録画HDD) 「恋の阿蘭陀坂」(1951年、大映) 監督鈴木英夫/脚本松田昌一/美術木村威夫/京マチ子/菅原謙二/千秋実/北河内妙子/浦辺粂子/見明凡太朗 先日観た小林旭主演の「さすらい」同様、この映画も旅回りのサー…

三遊亭円朝の世界まであと半歩

森まゆみさんの新著『円朝ざんまい―よみがえる江戸・明治のことば』*1(平凡社)を読み終えた。 本書は「何でも歩かなければ、実地は踏めませぬ」という三遊亭円朝の言葉を肝に銘じた森さんが、円朝の愛した門人ぽん太になぞらえて名付けた相棒ぽん太(山本…

印象的な多々良純

川島雄三監督大特集3@衛星劇場(録画HDD) 「真実一路」(1954年、松竹) 監督川島雄三/原作山本有三/脚本椎名利夫/桂木洋子/淡島千景/山村聰/水村国臣/多々良純/佐田啓二/須賀不二夫/市川小太夫/毛利菊枝/三島耕 子供を身籠もった女性を妻に迎…

大都会の暗闇、琴のそら音

また結滞が気になりだした。わたしの場合脈が抜ける式の不整脈である。疲れたりストレスを抱えていると出やすいのはわかるが、休みの日に家にいてもたまに出ることがあるからわからなくなる。 不整脈がひどくて憂鬱な気分になると手に取るのが内田百間の随筆…

川上文学からしばし離れようか宣言

川上弘美さんの新作長篇『真鶴』*1(文藝春秋)を読み終えた。 繰り返し書いていることだが、わたしは『センセイの鞄』以来の川上ファンである。以来刊行された小説やエッセイ集などはたいてい購い、読んでいるはずだ。けれども、このあいだ中公文庫に入った…

サーカスの郷愁

日活名画館・小林旭シアター@チャンネルNECO(録画HDD) 「さすらい」(1962年、日活) 監督野口博志/脚本小川英/小林旭/松原智恵子/沢本忠雄/平田大三郎/佐々木孝丸/二本柳寛/菅井一郎/高原駿雄 「ブランコの正二」と呼ばれているサーカス(団長…

見て、記憶して、思い出す人

河出文庫から『須賀敦子全集』の刊行が始まった。もともと同社から函入上製本として出ていたものの文庫化である。まさか『須賀敦子全集』が文庫になるとは思わなかった。文庫に入った須賀さんの本は古本でだいたい集め、持っているが、読んだことがあるのは…

行列してまで…

国宝伴大納言絵巻展@出光美術館 ある人から、「会期末ぎりぎりだけれど」と断り付きで招待券をいただいたので、長男を連れて出かける。この週末は会期末だからどの日に行っても同じだったと思うのだが、とりわけ最終日を選んでしまったのは判断ミスもはなは…

犬神家と小早川家

監督市川崑の映画たち@日本映画専門チャンネル(録画HDD) 「犬神家の一族」(1976年、角川春樹事務所・東宝) ※?度目 監督市川崑/原作横溝正史/脚本長田紀生・日高真也・市川崑/石坂浩二/高峰三枝子/三条美紀/草笛光子/島田陽子/あおい輝彦/小沢…

散歩愛好者の究極の愉しみ

山野勝『江戸の坂―東京・歴史散歩ガイド』*1(朝日新聞社、→11/1条)の感想を書いたら、退屈男さんより、ほぼ同時期に似たような“坂道本”が出たことを教わった。冨田均さんの『東京坂道散歩』*2(東京新聞出版局)である。 さっそく東京新聞のサイトで確認す…

アラーキーの撮った路地を探せ

「荒木経惟 東京人生」@江戸東京博物館 40年以上にわたり東京を撮りつづけてきたアラーキーの個展は、一階企画展示室ではなく、パノラマや模型展示が迫力ある五・六階の常設展示室で開催されている。江戸博の常設展示室に行くのは久しぶりだ。東京に来てま…

無関心と保守の精神

鹿島茂さんの新刊エッセイ集『パリの秘密』*1(中央公論新社)を読み終えた。 本書は鹿島さんが「歴史探偵」「建築探偵」としてパリの市内を歩き回り、歴史的遺跡や文学的遺跡、史上有名ではないけれども特筆に値するマニアックなスポットなどを、鹿島さん独…

やっぱり泣ける加藤嘉

松本清張サスペンス映画大特集Part1@衛星劇場(録画HDD) 「砂の器」(1974年、松竹) ※二度目 監督野村芳太郎/原作松本清張/脚本橋本忍・山田洋次/音楽芥川也寸志/丹波哲郎/加藤剛/森田健作/加藤嘉/島田陽子/笠智衆/渥美清/緒方拳/春日和秀/…

坂の名前

東京に来て驚いた、というより実感したのは坂道が多いことで、職場が台地上に、最寄駅は谷にあるので、まず通勤退勤のとき必ず坂道を上り下り(通勤時は上り、退勤時は下り)しなければならないのがひと苦労だった。 仙台に住んでいたときは完全に自動車に頼…

藤田嗣治本読みくらべ

平野政吉美術館のミュージアム・ショップにて、フジタ作品の絵葉書何枚かと、湯原かの子さんの評伝『藤田嗣治―パリからの恋文』*1(新潮社)を買い求めた。 湯原さんの本は、今年3月、ちょうど東京国立近代美術館で「藤田嗣治展」が開催された頃刊行されたも…

第86 フジタと達三の秋田

家を不在にしていたため、しばらく記事が中断していた。秋田市に所用があり、滞在していたのである。ここ数年秋田と言えば県南内陸部の横手を訪れる機会がほとんどだったが、今年に入り急に県庁所在地である秋田市に赴く機会が増え、今回で三度目となる。 そ…

松本哉さん最後の荷風本

松本哉さんの突然の訃報(亡くなったのは15日)に驚いた。今月集英社新書から新著『永井荷風という生き方』*1が出るのを知っていたから。はからずも遺著ということになってしまったが、こういうタイミングだから、亡くなる以前にお手元には届けられたのだろ…

栄光の映画美術

松尾昭典監督の佳品「人間狩り」で、殺人犯の大坂志郎が靴修理の仕事をしながら身を潜めて暮らす町屋駅前の陋巷が、ロケではなくオープンセットだと知って驚いた。川本三郎さんの『東京の空の下、今日も町歩き』*1(ちくま文庫)の文庫版での再読で知ったの…

豊悦金田一の魅力

監督市川崑の映画たち@日本映画専門チャンネル(録画HDD) 「八つ墓村」(1996年、東宝) 監督市川崑/原作横溝正史/脚本大藪郁子・市川崑/豊川悦司/浅野ゆう子/高橋和也/宅間伸/萬田久子/喜多嶋舞/岸田今日子/岸部一徳/加藤武/井川比佐志/神山…

東京人になれない偽東京人

このあいだ町屋の「路上古本屋」で中島梓(文)山藤章二(絵)『にんげん動物園』の元版(角川書店刊)を見つけた(→10/13条)あと、以前作成した「夕刊フジ連載エッセイ一覧表」(→2005/12/22条)を修正していたら、そろそろまた夕刊フジ連載山藤挿絵本を読…