アラーキーの撮った路地を探せ

40年以上にわたり東京を撮りつづけてきたアラーキーの個展は、一階企画展示室ではなく、パノラマや模型展示が迫力ある五・六階の常設展示室で開催されている。江戸博の常設展示室に行くのは久しぶりだ。東京に来てまもない頃訪れたきりのような気がするから、7、8年ぶりかもしれない。
いつものように長男を連れて行ったため、こまかな展示はパスして、大がかりな模型や体験型展示を中心に見て回った。前回まではあまり関心があるとは言えなかった庶民の家のような実物モデル(棟割り長屋や和洋折衷住宅など)が面白い。
以前長男と一緒に自宅最寄り駅前で目撃したアラーキーは、いつも朝の通勤時に通る路地を撮影していた。今回の個展でこの写真がないものか、探したかったというのが個展を観に出かけた目的のひとつだった。
「色夏」という、今年デジカメで撮影した作品群がおびただしく展示されており、わたしたちが出会ったのもおそらくその一貫だったのかもしれない。しかしながら目当ての路地は見つからず肩を落とした。
「平成色女」という女性ばかりを撮影したブースの入口には、「子供にとって表現がきついので云々(文章はまったくうろ覚え)」という注意書きがしてあったが、入ってみるとたしかに、これぞアラーキーと呼べるような雰囲気の写真が多かった。
帰宅してから長男は母親に、乳ガンで片方の乳房をとった女性のポートレートや、髪の毛で二つの乳房を隠している女性のポートレートなどがあったと報告していた。子供というのはこういう写真こそ反応するのである。