豊悦金田一の魅力
- 監督市川崑の映画たち@日本映画専門チャンネル(録画HDD)
- 「八つ墓村」(1996年、東宝)
- 監督市川崑/原作横溝正史/脚本大藪郁子・市川崑/豊川悦司/浅野ゆう子/高橋和也/宅間伸/萬田久子/喜多嶋舞/岸田今日子/岸部一徳/加藤武/井川比佐志/神山繁/石橋蓮司/うじきつよし/白石加代子/石倉三郎/吉田日出子/西村雅彦/織本順吉/
豊川悦司の金田一耕助は中性的で軽く饒舌。でも、横溝正史が頭に思い描いていた金田一耕助は、ひょっとしたらこんな人だったんじゃないだろうかと思わないでもない。「犬神家の一族」にせよ、「獄門島」にせよ、この「八つ墓村」にせよ、依頼された事件を調査するため田舎に来て、そこで土俗的な事件に巻き込まれるだけであって、本来は東京に事務所を構えるモダンな人間のはずだからだ。
だから、金田一の真の姿はむしろ光文社文庫で出た『金田一耕助の帰還』*1や『金田一耕助の新冒険』*2などでわかるのではないか、というのがわたしの推測なのだが、実現できていないから、誤った推測である可能性もある。
ところで「八つ墓村」は、例の松竹・渥美清金田一版を観ただけ(むろん原作もずっと昔に読んだ)だが、あの映画は鍾乳洞内での場面がサスペンスフルで、ミステリ映画というより冒険映画みたいだなあと感じた記憶がある。
それにくらべれば、この市川・豊悦版は鍾乳洞の場面の盛り上がりはさほどではない。市川金田一映画では常連の加藤武・神山繁・白石加代子といった面々の出演はあるが、それまでの作品が豪華出演陣だったゆえか、全体的に軽い印象である。
豊悦金田一が意外にはまっていたので、どうせ「犬神家」をリメイクするのだったら、わざわざ年老いた石坂浩二をふたたび金田一に据えなくとも(いや、本当はわたしは石坂金田一好きなのだ)、豊川悦司のままにすればよかったのに、と残念な気持ちもある。