サーカスの郷愁

「さすらい」(1962年、日活)
監督野口博志/脚本小川英/小林旭松原智恵子/沢本忠雄/平田大三郎/佐々木孝丸/二本柳寛/菅井一郎/高原駿雄

「ブランコの正二」と呼ばれているサーカス(団長は菅井一郎)の空中ブランコ乗り小林旭は、事故で仲間のブランコ乗りを墜落死させてしまう。死んだ男と恋仲だったのがやはりブランコ乗りの松原智恵子であり、小林を深く恨む。
それがきっかけでサーカスをやめた小林は、ある暴力団組織(組長が二本柳寛)からの借金にあえぎ、危機的状態にあった別のサーカス団(団長が佐々木孝丸)の用心棒として居つき、その後ブランコ乗りとして復活する。そこには以前から松原智恵子も移籍して所属しており、松原は次第に小林に憧れを寄せるようになってゆく。
クサい台詞と、中途半端な台詞のやりとり、ヘリコプター二機にブランコをぶら下げて空中ブランコをさせるという破天荒な着想と予定調和的な大団円。ひどい映画、時間の無駄かもと苦笑しつつ、こういう作品も観なければプログラム・ピクチャーの何たるかは理解できないだろうと我慢する。さすらい [DVD]
渡辺武信さんは『日活アクション映画の華麗な世界』*1未来社)のなかで、凡作であるが見るべき点として、小林旭の体技と松原智恵子の全身タイツ姿を挙げている。渡辺さんが指摘するシーンは本当に小林旭本人が演じていたのか、どうも怪しい。とすれば、可憐な松原智恵子の全身タイツ姿だけが見ものと言うべきか。
仮設のテントで行なわれるサーカスはいまでもあるだろうが、ドサ廻り的に地方興行を行なうサーカスはまだあるのだろうか。子供の頃山形にやって来たコグレ大サーカスを親と観に行った記憶が浮かんできて、懐かしさにおそわれる。球体のなかで遠心力を使ってぐるぐると走り回るオートバイの音のやかましさが思い出されるのであった。