行列してまで…

ある人から、「会期末ぎりぎりだけれど」と断り付きで招待券をいただいたので、長男を連れて出かける。この週末は会期末だからどの日に行っても同じだったと思うのだが、とりわけ最終日を選んでしまったのは判断ミスもはなはだしい。
「伴大納言絵巻」を所蔵する出光美術館を訪れるのは初めて。帝国劇場の建物の九階にある。エレベーターを降りて会場に入るなり目にした光景に慄然とした。展示室に入る前の時点で大行列で、すべて見終えるまで90分やら120分といった立て札が目に入る。展示室でも順路に沿ってそのまま行列が続いている。
いったんは行列に並んだものの、子供連れでもあり、またわたしはこうした行列に並ぶのが苦手なので(ラーメン屋ならまだ我慢できる)、まもなく列を離れた。美術館は自由に歩いて、好きなところを観たいものだ。それが最初から最後まで途切れず続く行列のなかで、ゆっくりゆっくり観なければならないなんて、苦痛以外の何者でもない。
別にこれは展覧会に対する非難ではなく、個人の感想である。もとより招待券だからこそ可能だったとも言える。自腹を切ったうえで入ったならば、やむを得ず並んでいたかもしれない。
さいわい隣の部屋にデジタル高精細画像による部分展示があったので、それを観て我慢する。この「伴大納言絵巻」は、登場人物によって絵の具の使い分けがなされていたことが最近判明し、それによって、この絵巻に描かれたいわゆる「応天門事件」にも新たな解釈が可能となったのだという。
出光美術館を出たわたしたちは、そのまま向かい側の皇居前広場を散策し、神保町まで歩いた。皇居前広場に来たのは、もしかしたら中学校の修学旅行以来かもしれない。これだけ広々とした空間なのだから、敗戦直後ここが怪しげな男女たちの××の場になったという原武史さんの説も納得してしまう。
毎週日曜日、この皇居前広場を中心に、平川門から祝田橋までの区間の道路が自動車通行止めになり、レンタサイクルでサイクリングができる“パレスサイクリング”という催しをやっているらしい。親子連れなど多くの人びとが悠々とサイクリングを楽しんでいた。次男が自転車に乗れるようになったら、弁当持参で皇居前広場というのもアリかもしれない。