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ようやくレンタルビデオで借りることができた。原作を先に読んだが(→3/30日条)、私は配役を勘違いしていた。久我美子の新妻はいいのだが、高千穂ひづると有馬稲子の役を逆だと思っていた。
「砂の器」の原作と映画の関係と同じく、「ゼロの焦点」の場合も原作をうまく脚色して人間中心のドラマにしている。「ゼロの焦点」は“女のドラマ”だ。原作は新婚早々に失踪した夫の謎の生活を明かすことで女性の暗い過去が浮かび上がってくるにとどまり、女性たちが前面に出てくることはなかった。ところが映画になるとこの女性たちがクローズアップされる。高千穂ひづると有馬稲子の絡みは原作にはなかった。これにより久我美子の役柄が相対的に軽くなっている。やはりこの映画も、関川夏央さん風にいえば脚本のお手柄なのだろうか。
北陸の雪の風景、能登の海の寒々しい雰囲気が、モノクロ映像によって際だっている。