食味エッセイストとしての吉田健一

旨いものはうまい

角川春樹事務所から新しく「グルメ文庫」というシリーズが発刊され、その第一弾のなかに吉田健一『旨いものはうまい』*1(グルメ文庫)が入った。吉田健一の食味エッセイ集は、文庫に入ったものだけを数えればこれで6冊目だ。

  1. 『酒肴酒』(光文社文庫) 略称「酒」
  2. 『続酒肴酒』(光文社文庫) 略称「続」
  3. 『私の食物誌』(中公文庫) 略称「食」
  4. 『舌鼓ところどころ』(中公文庫) 略称「舌」
  5. 『新編 酒に呑まれた頭』(ちくま文庫) 略称「頭」
  6. 『英国に就て』(ちくま文庫) 略称「国」
  7. 『三文紳士』(講談社文芸文庫) 略称「三」
  8. 『乞食王子』(講談社文芸文庫) 略称「乞」
  9. 『英語と英国と英国人』(講談社文芸文庫) 略称「語」
  10. 『定本 落日抄』(小澤書店) 略称「落」

これまでのアンソロジーも重複している文章がいくつかあったが、今回はどうなのか。初出一覧がなかったので、調べてみたのが下の目次表である。現段階で調べがつかなかったものが3篇あったが(※印のもの)、他のエッセイはそれぞれ上の10冊の著作から採られている。

  • 美味求真
    • 「食物の美」←食
    • 「旨いもの」←食
    • 「美味求真」←落
    • ※「普通の食べもの」
    • 「当て外れ」←続・舌
    • ※「作法不作法(酒・飲み方・食べ方)」
    • 「三楽(食べる楽しみ・飲む楽しみ・書く楽しみ)」←酒
  • 酒と人生
    • 「酒と人生」←舌
    • 「飲む話」←舌
    • 「師走の酒、正月の酒」←続・三
    • 「酒」←酒・頭
    • 「春の酒」←頭
    • ※「夏の酒」
    • 「酒と肴」←酒・落
    • 「酒、肴、酒」←酒・落
  • 旅の食物誌
    • 「酒を道連れに旅をした話」←頭
    • 「旅と食べもの」←頭
    • アメリカの酒場」←落
    • 「飲食行」←三
    • 「英国の飲み屋」←国(原題「英国のパブ」)
    • 「英国人の食べもの」←語
    • 「お茶の時間」←語
    • 「木の芽田楽」←酒・頭
    • 「東北の食べもの」←酒・頭
    • 「私の食物誌(抄)」←食
    • 琉球料理」←乞
  • 女房コツク論
    • 「満腹感」←続・三
    • 「胃の話」←酒・舌
    • 「女房コツク論」←酒・舌

初出一覧好きとして、アンソロジーでそれがないのはとても残念である。巻末に底本情報のみ表示されているのだが、そのなかに『時間』(講談社文芸文庫)も含まれていた。いったいあの本からどの部分が採られているのか、さっぱり見当がつかない。