二代目錦之助登場

  • 四月大歌舞伎・夜の部

源平布引滝 実盛物語

ひょっとしたら義太夫狂言のなかでもっとも好きな演目かもしれない。爽やかな齋藤実盛(仁左衛門)と、未来を予言するかのような人間関係、切り離された小万の片手を、片手のない小万の死体に接いでみたら一瞬だけ息を吹き返すという怪奇趣味、物語に緩みがなく絶品である。今回は太郎吉(のちの手塚太郎)を仁左衛門の実孫千之助が演じたということもあって、お祖父さんと孫の微笑ましき共演を見守るという楽しみもあった。

口上

錦之助の襲名披露。萬屋は大繁栄で、それが口上の大人数につながっている。雀右衛門さんが元気がなく心配。勘三郎が「御機嫌うるわしゅう」とひと言発するだけで場内笑いが出るのはかわいそう。

双蝶々曲輪日記 角力

錦之助の二役。千秋楽が近いこともあってか、声がかすれてしまっている。襲名披露狂言は大変なのだ。錦之助は放駒よりは「つっころばし」の与五郎が良いし、色悪的な役柄が似合うと思う。

新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎

勘三郎の宗五郎を観るのは二度目か。理性を持って妹の無惨な死を受け入れようとしていたのに、その顛末を聞かされて我慢できずに酒をくらい、徐々に理性を失ってゆくあたりの酔態の演技が、もう何とも素晴らしい。息を呑んで堪能する。
勘三郎勘太郎七之助中村屋の世話物は、観ていると江戸の世界にタイムスリップしたかのような気分にさせられて爽快。とってつけたような(いかにも世話物を練習したというような)感じがないのである。毎回思うが、序幕があまりにも引き締まっているから、二幕目からはちょっとダレてしまう。