パリの日本人芸術家たち

巴里憧憬

埼玉県立近代美術館を訪れるのははじめて。最寄駅は京浜東北線北浦和駅で、駅西口の目の前にある北浦和公園の敷地内に美術館がある。観終えたあと、美術館周辺をぶらぶら歩いてみたが、それなりに年季が入った、まあまあ賑やかな商店街が通り沿いに伸びていて好ましい町だった。駅間近に大きな店はなく、商店街を抜けた突き当りに大手スーパー(サティ)があるという立地が、商店街が寂れない理由だろう。見たところ古本屋はなし。
さて今回の企画展は、両大戦間期のパリに花開いた「エコール・ド・パリ」の時代に活躍した内外の画家たちの作品を展示したもの。サブタイトルにあるように日本人画家がメインだと思うのだが、第Ⅰ部としてまず外国人画家の作品が紹介されている(展示自体第Ⅰ部の作品は、第Ⅱ部の一部を観たあと並んでいる)。
外国人作家としては、シャガール、スーチン、モディリアニなど。藤田嗣治と交遊のあったスーチン、モディリアニの絵をこうしてまとまった点数意識して観るのははじめてかもしれない。
個人的には外国人画家より日本人画家の作品が目当てだった。とりわけ岡鹿之助、海老原喜之助、藤田嗣治佐伯祐三、清水登之、荻須高徳ら。よかったのは、岡の「積雪」、また海老原のやはり雪山のゲレンデを描いた作品(タイトル失念)。海老原ブルーがいい。
浅学にて名前を聞いたことがない画家のほうが多かった。彼らは藤田を慕い彼に憧れ、同じような成功を夢見てパリに渡り藤田と交流を持ったり、あるいは逆に藤田に反発したり、またパリに集う日本人画家たちとの交流を嫌い、パリから離れた農村にアトリエを持って暮らすなど、当たり前だがいろいろなタイプの画家がいることがわかった。
大半は藤田のように様々なかたちで目立つことがないまま、いわば「歴史に埋もれた」「忘れられた」画家なのかもしれないが、それぞれの作品にもまた心うたれるものがある。パリは「絵になる都市」なのかもしれない、というと画家に悪いか。
上に掲げた名前以外に印象に残ったのは、明治を代表する水彩画家(だそう)で、パリに渡っても作風に大きな変化を蒙らなかったという三宅克己の絵や、これは画家ではないが同時期にパリに滞在していた金子光晴の作品。
今回の企画展は2月12日までで、次回はがらりと趣向が変って21日から「シュルレアリスム展」がはじまる。大好きなマグリットデルヴォー、キリコ。つづけて観に行くことになりそうだ。