ひろいよみ酔いざめ日記(2)

夜、井伏氏邸訪問。先客二人あり、一緒に外出するところ、太宰、亀井酒一升持参で来訪するに逢い、おでんやで五人でのむ。井伏邸にかえり又のむ。小生バツが悪かったが同座す。一寸の間と思っていたのに、荻窪駅へ来たら下り終電車だけで、小生は線路づたいに阿佐ヶ谷まで歩く。下駄の鼻緒切れてハダシ。途中、路にころび胸を打つ。阿佐ヶ谷で鼻緒をたて、道を帰る。途中馬橋交番でつかまり、帰ったのは三時であった。
高橋徹月の輪書林それから』を読んだら、木山捷平の『酔いざめ日記』を読みたくなった。あちこちをパラパラとめくる。
この翌々日、木山は胸の痛みをこらえながら、徴用で戦地に旅立つ井伏を見送るため東京駅に行くものの、間に合わず、「ゴケントウヲイノル」という電報を打った。井伏は23日に入隊し、南方へと向かう*1。まもなく太平洋戦争が始まった。

*1:井伏鱒二『徴用中のこと』(中公文庫)。