集英社文庫コバルトシリーズの収穫

源氏鶏太『死神になった男』(角川文庫)
カバー、100円。幽霊・妖怪物の短篇集。『別冊幻想文学6 日本幻想作家名鑑』の「源氏鶏太」項を見るとこの本が別立てて紹介されているから、それなりに評価のある短篇集ということだろう。
阿刀田高他『お笑いを一席』(新潮文庫
カバー、100円。以前から気になっていた本で、先日西秋書店さんを介してふじたさんが購入されていたのを横目で見て、涎を流していた。実力派作家たちによる新作落語アンソロジー。名を連ねているのは、阿刀田高飯沢匡井上ひさし色川武大江國滋長部日出雄駒田信二塩田丸男田中小実昌都筑道夫戸板康二野坂昭如藤本義一結城昌治和田誠という豪華な顔ぶれ。おまけに、それぞれの扉には山藤章二さんによる各作家の高座姿似顔絵が付けられている。これまでなかなか出会わなかったのは、著者が「阿刀田高他」で、阿刀田さんのところに入れられているからであることが判明。新潮文庫の背色も、朱色から緑へのグラディエーションという「阿刀田カラー」だ。ISBN:4101255016
野呂邦暢『文彦のたたかい』(集英社文庫コバルトシリーズ
カバー、60円。今日一番の大収穫。

この店は、子供用品を買いだめする妻に付き合って、自転車で30分ほどかけてたまに訪れる。野村宏平『ミステリーファンのための古書店ガイド』*1光文社文庫)がまだウェブサイトだけしかなかった頃にそこで知ったお店。文庫版では割愛されている。
野呂邦暢さんの『草のつるぎ/一瞬の夏』*2講談社文芸文庫)の巻末にある著書目録をときおり見ては、「これはなかなか見つからないよなあ」とため息をついていたのが、集英社文庫コバルトシリーズの2冊『文彦のたたかい』『水瓶座の少女』だった。新古本屋に行くと、少し恥ずかしいけれど、これらを探すためコバルトシリーズのチェックも怠らなかった。
今回の『文彦のたたかい』は、同シリーズの棚ではなく、床に並んだケースに雑然と詰めこまれた中に発見した。ついでに『水瓶座の少女』もあれば言うことないのだが、そう話はうまくいかないようだ。まだ同シリーズとは縁を切れない。たぶんこのシリーズの文庫を買うのは生まれて初めて。
解説などが一切ないので事情がわからないのだが、すでに芥川賞を受賞してのちに代表作と言われる『諫早菖蒲日記』を刊行した直後に、こうしたジュニア小説を書き下ろす(?)に至った背後には、何があるのだろう。ともかくも60円で手に入れたのだから、飛び上がるほど嬉しい。