ひろい読み断腸亭日乗(7)

七月廿二日。空よく晴れ日の光焼くが如く風そよ\/と吹き通ふ。いかにも東京の夏らしき日なり。夜銀座二丁目の洋食屋にて神代君に逢ふ。
「空よく晴れ日の光焼くが如く風そよ\/と吹き通ふ」というのが「いかにも東京の夏らしき日」と荷風さんは言う。前半はいまでもそうだが、いまの東京の夏には「風そよそよ」がない。まだ堀割が縦横にめぐらされていた銀座だから、そこを渡る川風があって涼しかったと想像する。