第50 日本橋再発見

日本橋小網町のミルクホール

今日も秋晴れで気持ちがいい。散歩日和だ。先日は麹町・赤坂・目黒といった山の手を歩いたので、今日は少しおもむきが違ったところを歩こう。
ということでスタート地点に選んだのは下町、というより「川の手」と呼んだほうがしっくりくる日本橋である。
日本橋から日本橋川沿いに隅田川に出てみる。日本橋の一つ東(隅田川)寄りにあるのは江戸橋。この間に昭和5年に建てられた野村證券ビルがあり、江戸橋のたもとには同じ年に建てられた三菱倉庫があるものの、両方とも外側に改修が加えられており、昔日のおもかげはない。
江戸橋を北側に渡ってさらに日本橋川沿いを歩く。まわりは完全なオフィス街であるが、旧日本橋区にあたるこの地域は小舟町・小網町といった昔ながらの町名を残しており好ましい。歩いていると、町名だけでなく、ビルの谷間に忘れられたようにぽつんと古い建物が取り残されているのを発見して嬉しくなる。
表面が煉瓦タイルで覆われ、レリーフなどの細かな意匠が凝らされたミルクホール。銅板葺きのいわゆる「看板建築」の商店。まわりはビルやマンションばかりだが、数十年前頃はこれらの建物が立ち並んでいた日本橋区の様子を想像する。ぺんてるの本社があったり、キリンの社屋もある。東京はまだまだ自分の知らない場所が多いと思うと、また嬉しくなる。
このままさらに日本橋川沿いに歩くと、左に日本IBMの社屋、右に旧山一証券の本社ビルが見える。独特の形をしている旧山一証券の建物には、山一証券倒産後部分的に別の会社が間借りしているらしくところどころ室内に明かりがついている。しかしビル全体が一つの会社ということではないゆえか、ビルの表面が薄汚れている印象を受ける。いくら近代的で清潔な建物であっても、メンテナンスが不十分だとこうなるのだ。
日本橋川のもっとも隅田川寄りには昭和2年に建てられた豊海橋。橋を渡ると永代橋だ。永代橋から隅田川を渡る。永代橋の上から下流を眺める景色が大好きだ。正面に佃のリバーシティの高層マンションがそびえ立ち、川は左右二手に分かれる。隅田川の上に広がる青空を見るたびに開放的になり、気分が良くなる。単純だが、隅田川沿いに住みたいなあと思うのである。