第48 間口二間半の謎

朝の通勤時、私は、本郷通り農学部から東大正門までの間の西側(東大キャンパスとは逆)歩道を歩くことが多い。最近この歩道が整備された。細かな石を含んだ質感の素材で表面が平らに舗装し直され、また視覚障害者用誘導帯(誘導ブロック)が設けられたのである。
今朝もそこを歩いていたら、通りに構える店の入り口のちょうど前の部分から車道に向かって、歩道を区切るように直交して大理石風の舗装タイルが貼られていることに気づいた。
これは文京区の店側へのサービスなのだろうか、はたまた景観的なデザインなのだろうかと考えながら歩いていると、次に、その直角の舗装タイルが必ずしも店(あるいはマンション)の入り口とは関係ないところにも貼られていることに気づいたのである。
不思議に思い、あらためて考えてみると、これらが一定の間隔で貼られているらしいことにようやく思い至った。そこで間隔を測ってみると、自分の歩幅でだいたい九歩見当になった。一歩が50センチ強だから、約4.5メートルから5メートル間隔ということになる。
大理石風舗装タイルが必ずしも店の入り口にあたっていないと前述したけれども、それはきわめて稀で、大半が店(しもた屋も含む)かマンションの入り口にあたっているのである。マンションといっても、昔そこには店か家屋が建っていたはずである。本郷通りの東大正門から北側は昔のたたずまいを残す家並みがかろうじて続いていることを考え合わせると、面白いことがわかってくる。
つまり、本郷通り(とりあえず東大正門より北側と限定しておく)の家並みは約4.5メートルから5メートル間隔に規則正しく並んでいるのではないかと推測されるのである。「約4.5メートルから5メートル間隔」という表現は妥当ではない。昔の尺貫法に換算すれば一間=約1.8メートルだから、二間半ということになるだろう。
二間半間隔で店や家屋が軒を連ねるという景観が、いまなお本郷通りからうかがうことができるのだ。
調べてみると、二間半というのは思った以上に一般的な間口のようだから、私の推測もあながち間違ったものではなさそう。行政がこういうことを意図して歩道を改修したのであれば、なかなかやるじゃないのと褒詞を贈りたい。ついでにそれに気づいた自分にも。