空いていた続々大番

「続々大番 怒濤篇」(1957年、東宝
監督千葉泰樹/原作獅子文六/脚本笠原良三/音楽佐藤勝/美術中古智/加東大介淡島千景原節子/青山京子/仲代達矢平田昭彦三木のり平有島一郎/清川玉枝/村上冬樹/十朱久雄/山茶花究藤木悠/若月輝夫/丘寵児

大番四部作のうち、前二作「大番」「続大番」は観て、残り二作は未見のはず。「続大番」を観たのはいつだろうと調べてみると、なんと6年半も前のことになるではないか(→2005/5/27条)。いまはなき三百人劇場での、やはり千葉監督特集であった。
それ以来、テレビ(日本映画専門チャンネルなどのCS)や劇場で、何度か大番四部作を観る機会はあったが、そのことごとくを見逃し(あるいは録り逃し)、今回こそはと気合いを入れて予定を開けた。
先日の「悪の愉しさ」は予想以上に人が多かった(客席の四分の三は埋まる)。今回も警戒していたが、予想に反して閑散としている。「続々」だから、前二作を観た人が観るということなのだろう。
恩師(河津清三郎)の自殺によって失意のまま郷里宇和島に引っ込んだギューちゃん。しかし地元では東京兜町で名を上げた実業家として持ち上げられ、本人も舞い上がる。おりしも殿様(平田昭彦)伯爵の里帰りにより、青年の頃から憧れていたマドンナ原節子(平田の奥方)も一緒に帰ってきた。
原節子が実家に里帰りしたときに酌をいただきながら感激するあたり、原さんの気品が素晴らしい。皇族(美智子皇后の雰囲気)を思い起こさせる気品と話し方。いまこういう役ができる女優さんはいないだろう。
それに反してギューちゃんを思う淡島千景の健気さと色気、美しさ、これまた絶妙。男に尽くすという女性を演じさせてこの人の右に出る人はいない。この映画で原節子淡島千景どちらをとるかと問われれば、迷わず淡島千景をとる。なのにギューちゃんは。
ふるさとの特産である煎り子を元手にひともうけしようと闇屋となるあたり、商売相手の山茶花究は相変わらずの胡散臭さ万点。山茶花究の手下である吃音の丘寵児という役者さん(というか芸人さん)、この人が今回気になった人物であった。