原田芳雄×2、石橋蓮司×3
- Movix亀有
- 「大鹿村騒動記」(2011年、2011「大鹿村騒動記」製作委員会)
- 監督・脚本阪本順治/脚本荒井晴彦/原田芳雄/大楠道代/岸部一徳/石橋蓮司/三國連太郎/佐藤浩市/松たか子/冨浦智嗣/瑛太/小野武彦/小倉一郎/でんでん/加藤虎之介
主役級揃い、演技派揃い、コメディ風であるということで気になっていたが、原田芳雄さんが封切り直後に亡くなったということもあり、観に行かねばと強く感じた。
原田さんが経営する鹿料理屋が「ディア・イーター」という人を食ったような、洒落っ気たっぷりのネーミングであることも笑えたし、原田さんや岸部一徳さんの軽妙なやりとりにも心が和む。存在感があったのは大楠道代さん。コメディをやらせたら抜群だなあと思ったのが佐藤浩市さん、気になったのは冨浦智嗣さん。
大鹿村に古来から受け継がれてきた村芝居にからめて演じられる人間ドラマ。それにしても、原田さんと石橋さんお二人が歌舞伎を演じるシーンは見所だ。この二人が突出してすばらしい。口跡など、まるで本物の歌舞伎を観ているかのようだった。
原田芳雄さんのご冥福をお祈りします。
- 「悪霊島」(1981年、角川春樹事務所・東映)
- 監督篠田正浩/原作横溝正史/脚本清水邦夫/鹿賀丈史/室田日出男/佐分利信/古尾谷雅人/岩下志麻/岸本加世子/石橋蓮司/伊丹十三/中尾彬/多々良純/宮下淳子/嵯峨善兵/根岸季衣/浜村純
金田一映画のなかで、はじめて封切時に観たのがこの作品だったと思う。「犬神家」も「獄門島」も「悪魔の手毬唄」も「女王蜂」も、あとからテレビで観たり、三本立てなどで観たのである。
それまでの市川崑監督作品と違い、ビートルズの「レット・イット・ビー」を主題曲に使うなど斬新であり、もの悲しさに欠けるなあと感じていた。それまで馴染んでいた石坂金田一でなく、鹿賀丈史であることにも違和感があった。
でも、30年を経てあらためて観てみると、そうした違和感は感じられない。市川作品と通じあうもの寂しさ、時代感がある。70年代、80年代という年代の違いこそあれ、実際はせいぜい5、6年しか違っていないはずだ。
金田一作品としての筋もまた、「意外に面白いじゃないか」と再認識する。伊丹十三さんや古尾谷雅人さんといった自死した俳優、佐分利信・多々良純・浜村純といった老優たちが、まだお元気だったのだ。佐分利信は重厚すぎる。そして、岩下志麻の凄艶ともいうべき美しさ。一番最初の登場シーンに彼女の美しさが凝縮されている。
わたしはこの映画を観て、石橋蓮司という俳優を知ったような気がする。いかにもひと癖ありそうな存在感が、それ以来心にひっかかりつづけている。
- BEST OF HARADA YOSHIO〜俳優原田芳雄自薦傑作選〜@日本映画専門チャンネル
原田芳雄さんの代表作、竜馬映画の代表作と言われている有名な作品だが、子どもたちが喧嘩しながら夏休みの宿題をしている騒がしい部屋で観ていたせいか、いまひとつ集中できず、とびきりのすばらしさを感じたわけではなかった。いかにもATGらしいというか、猥雑、退廃的な雰囲気で、その雰囲気で勝負するようなところがあった。わたしはもう少し歴史の流れがわかるような(悪く言えば説明的な)部分があるほうが好みだ。
「大鹿村騒動記」でも共演した親友同士、原田芳雄・石橋蓮司の坂本・中岡コンビには凄みがある。もう一人松田優作にも不思議な存在感がある。本人とおなじ秋田出身の新撰組隊士粟津號の死にざまが哀しさを誘う。
このところ観た映画三本、忘れないうちに書いておく。奇しくもすべてに石橋蓮司さんが印象深い役柄で出ており、二本は原田芳雄さんの主演映画であった。