ブレスリリースの信用度
- スクリーンに咲いた華 麗しの銀幕女優@日本映画専門チャンネル(録画HDD)
- 「東京の休日」(1958年、東宝)
- 監督・脚本山本嘉次郎/脚本井手俊郎/山口淑子/小泉博/久慈あさみ/上原謙/八千草薫/小林桂樹/司葉子/宝田明/沢村いき雄/三好栄子/草笛光子/根岸明美/香川京子/淡路恵子/新珠三千代/原節子/森繁久弥/加東大介/池部良/安西郷子/雪村いづみ/越路吹雪/宮城まり子/久保明/柳家金語楼/三船敏郎/有島一郎/三木のり平
本の巻末などに載っているフィルモグラフィや、“日本映画データベース”やgoo映画にまとめられているデータは、制作発表時点でのプレスリリースによるものがほとんどだから、実際の映画の配役と違うことが珍しくないという話を聞いた。制作発表からできあがるまでに配役変更が行なわれることがよくあったのだそうだ。
まあいまでも、病気による降板などよくあるし、また監督との衝突で降りるというトラブルもないわけではない。わたしが憶えている有名な事例は、「影武者」での勝新太郎から仲代達矢への変更だろうか。
それにしてもこの「東京の休日」はそれが激しすぎる。山口淑子引退映画として制作され、東宝スターが端役で出演したこの作品、アメリカで成功したデザイナーが、在米一世の帰国ツアー一行に交じって骨休めと墓参などのため帰国し、束の間の休日を過ごしている間に群がる日本人たちを描いた愉快な映画だ。
旧友のデザイナー久慈あさみが、情人である落ち目の演出家上原謙にもう一度活躍してもらいたいと、山口淑子との合同ファッションショーを企画する。秘密裡に進めていた企画が、内緒話の連鎖でまわりに広がってゆき、最後に自分の耳に入ってくるというシークエンスが愉しい。
さて配役の話。ウェブのデータベースや、『演技者 小林桂樹の全仕事』(ワイズ出版)のフィルモグラフィと実際の映画では甚だしく配役が異なる。これだけ違っている映画に接したのは初めてのこと。
たとえば池部良はバーテンダーとなっているが、実際には小林桂樹の会社の上司だし、バスガイドとなっている杉葉子は出ていたのかすらもおぼつかない。そのバスガイド役として香川京子と淡路恵子が出ていたが、香川京子は「子守歌を唄う女」になっており(実際には宮城まり子一人)、淡路恵子に至っては名前が出ていない。
おでん屋の女将とある原節子は、ファッションショー冒頭で挨拶した服飾協会会長という役になり、逆にファッションショーMCとある森繁久弥は飲み屋のおやじ役として、ひととおりの見せ場をつくる。羽田空港に着いた山口淑子の写真を撮って押売りしようとする写真屋有島一郎・三木のり平コンビは名前が出ていないし、逆にフィルモグラフィに名前がある志村喬は出ていなかったように思う。
映画を撮っている山本嘉二郎監督のその場のひらめきや、スター俳優個々の事情もあったのだろうか、それにしても違いすぎる。