轟夕起子のはまり役
- 「才女気質」（1959年、日活）
- 監督中平康／原作田口武男／脚本新藤兼人／音楽黛敏郎／轟夕起子／大坂志郎／長門裕之／中原早苗／葉山良二／吉行和子／殿山泰司／渡辺美佐子／原ひさ子／新井麗子／峯品子／下條正巳
中平まみ『ブラックシープ 映画監督中平康伝』*1（ワイズ出版）を読んで以来、観たいと思っていた中平作品のひとつ。何せ贔屓俳優である大坂志郎・轟夕起子の二人が夫婦役というのだからたまらない。
表具師で妻に頭が上がらない大坂志郎と、バイタリティあふれる京女轟夕起子の組み合わせ。子供たちにいい学校を出てもらいたいという熱意が裏目に出て、長男の長門裕之も、長女の中原早苗も母親に反発して家を出てしまう。長門は見合いで西陣織の老舗令嬢吉行和子（可愛い！）という嫁をもらう。母轟夕起子は自分の手柄だと思い込んでいるのだが、実は吉行と中原は学校の同級生で、長門と吉行は裏で付き合っている仲だったことを知らないおめでたさ。そんな憎めないキャラクターの轟も可愛い。
身の回りから一人一人家族がいなくなり、最後に残るのはやさしい夫だけ。あれだけバイタリティにあふれた才女もしぼんでしまう寂しさ。こんなストーリーの映画、ほかにもあったような気がするが、思い出せない。
轟夕起子が京都の通りを歩き回るときの軽快な音楽が愉しく、それによって映し出される昭和30年代の京都の町並みも、そして、大坂志郎が常連で通っているイノダコーヒーのたたずまいも素敵。
