気晴らしは喜劇にかぎる?

「トンチンカン三つの歌」(1952年、東宝
監督斎藤寅次郎/脚本八住利雄榎本健一柳家金語楼花菱アチャコ田端義夫清川虹子伴淳三郎/関千恵子

他愛もない喜劇。女医清川虹子はかつて産んだ女の子を伊豆に住む花菱アチャコのもとに預けたが、花菱は貧窮から東京の親類でパン屋を営む柳家金語楼に託さざるを得なくなる。上京した花菱らと、金語楼、その息子の田端義夫、清川らが繰り広げる悲喜劇。
伊豆に住むというのにバリバリの大阪弁を話すアチャコ。女の子は丁寧な標準語なので、なおさら目立つ。まあそんなところに違和感を抱いても始まらないだろう。彼の歩き方は「アホの坂田」のような、おかしなものだ。これがアチャコのトレードマークなのか。そうでなくとも、あのような藝が吉本のなかで受け継がれていったのだなあと感じる。
エノケンはパン屋の近くに住む科学者なのだが、珍奇な発明品に笑いを誘われる。椅子に座らせて電流を流すと、座った人間が黒こげになって(肌が黒くなって)、髪が金髪(白黒なので判然としないが、白髪ではなく金髪か)になる。そんな他愛もないギャグが笑え、それで少しはストレスが解消される。
脚気を判断するための小さなトンカチを使って膝の下や体のいろんなところを叩いて、反応させるという古典的なギャグですら一々面白く、ああいまやこんな脚気診断なんて子どもたちは知っているのだろうかと、ここでも時代を感じてしまう。