カレーが食いたくなった

「カレーライス」(1962年、東映
監督渡辺祐介/原作阿川弘之/脚本舟橋和郎渡辺祐介江原真二郎大空真弓沢村貞子世志凡太花沢徳衛織本順吉/上田吉二郎/西村晃若水ヤエ子筑波久子/三戸部スエ/左卜全大泉滉

神田にある出版社に勤める若い男女社員二人(江原真二郎大空真弓)が主人公。恋仲というわけではないのだが、お互いを意識しあうような関係で、江原は下宿住まい、大空は裕福な家庭の令嬢。
物語は、出版社が倒産してしまい職を失った二人が紆余曲折のすえカレーライス屋を開業するに至るまでを描いたもので、個人的には筋よりも映画に映った東京風景に期待していた。ただしこの点ではいまひとつ。
観ているうち乗ってきたのは、大空のカレー屋開業案に最初は乗り気でなかった江原が、コック修行のため別のカレー屋に入り、カレーづくりから出前まで溌剌とこなしていきながらカレー屋の面白さに目ざめるあたりのシークエンス。S&B食品と提携していたのだろう、S&Bマークのついたカレー粉の缶がいつも映り込んでいる。
カレーができあがる過程や、カレー屋開業までのノウハウなど、このあたりを観ていて、獅子文六の“テーマ小説”的なにおいを感じた。『可否道』『バナナ』など、あの手のものである。阿川弘之さんの原作はどうなっているのだろう。
ただこの点についても面白味もマニアックな領域に踏み込まないまま流れてしまい、残念だった。インドカレー屋のオーナーで、当初大空真弓に資金提供を誘いかけ、彼女に襲いかかる敵役の青年実業家に世志凡太*1。きざっぽくて憎々しいのがいい。

*1:どこかで聞いたことのある名前だと思っていたら、浅香光代さんの旦那さんだった。むろんわたしはコメディアンとしての全盛期を知らない。