続篇も録っておくべきだった

陸軍中野学校」(1966年、大映
監督増村保造/脚本星川清司市川雷蔵小川真由美加東大介待田京介/村瀬幸子/E・H・エリック早川雄三

市川雷蔵主演の「陸軍中野学校」シリーズは全5作あって、この第一作のみ増村保造監督の作品。ドキュメンタリータッチで幹部候補生三好次郎が一人前のスパイに仕立てられてゆく様子が描かれる。
陸軍のなかに秘かにスパイ養成機関を作ろうとし、雷蔵らを集める上司が加東大介士官学校や陸大出の職業軍人は世間知らずなので、民間から幹部候補生として入隊したなかから頭脳優秀な人間を集め、彼らをスパイとして養成する。理由も示されず陸軍省に呼び出され、加東大介の前でテストされる場面がけっこう面白い。陸軍中野学校 DVD-BOX
赴任先も知らされず突然消息を絶った次郎を心配する母村瀬幸子と婚約者で二階に間借りしている小川真由美。小川は英国人の経営する商社でタイピストをしていたが、次郎の行方を捜すため参謀本部タイピストとして勤め始める。
雷蔵らの卒業試験は英国の暗号コードを英国大使館から盗み出せという実地訓練だった。実際回りくどいほどの手順を重ねてコードを盗み出すに至るまでの過程もゾクゾクして面白い。
しかし、せっかく雷蔵らが盗み出したコードが使い物にならないことが判明する。盗まれたことを悟った英国側がコードを変更したからだ。陸軍がコードを盗んだことを誰が英国側に知らせたかが問題となるが、そこには小川真由美が絡んでいた。
ここからのスパイに徹する冷酷無比な雷蔵が素晴らしい。温情を見せず彼女を毒殺してしまうのである。それにしても面白い映画だった。このシリーズは第一作が面白いというもっぱらの評判で、観るとたしかにその評判は正しかったことがわかったわけだが、第一作はさてスパイとして独り立ちして支那に赴任したというところで終わってしまう。たぶん続きは第二作でということになるのだろう。
ああ、たとえ第一作に劣るのだとしても、評価は人それぞれ。評判に惑わされず第二作以降も録画しておくのだったと悔やんでも遅い。救いはソフト化されていることで、たぶんレンタルもできるだろう。いずれ観てみたい。