乱歩・久作・正史と竹中英太郎

昼休みを利用して行ってきた。
竹中英太郎といえば、江戸川乱歩作品の挿絵である。とりわけ「陰獣」。霧が立ちこめたような幻影から輪郭が浮き上がる。紙の凹凸を炭によって強調させた手法が素晴らしい。乱歩作品としては、「陰獣」の原画のほか、「盲獣」の挿絵も展示されていた。
ほか、夢野久作と組んだ挿絵。夢野作品では「押絵の奇蹟」などが有名。また、横溝正史作品では「鬼火」の挿絵原画が素晴らしい。挿絵というより、それだけで一個の芸術作品である。
以上のような著名な探偵小説作家の作品のほか惹かれたのは、三上於菟吉の探偵小説「銀座事件」の挿絵だった。初めて目にするタイトルだが、昭和5年の作品。竹中による銀座のモダンな男女の風俗が描かれている。探偵小説としての出来栄えは不明だが、どこか奇特な版元が竹中の挿絵とともに復刻してくれないかしらん。読みたい。
ほかに子息竹中労との仕事ということで、著作の装画や映画で使用された原画、また遺品なども展示されていた。