稼業・野郎・ろくでなし

「早射ち野郎」(1961年、日活)
監督野村孝/原作三原貞修/脚本山崎巌/宍戸錠/笹森礼子/杉山俊夫/南田洋子吉永小百合金子信雄下條正巳高原駿雄/浜村純/郷硏治

陰鬱な映画を観たので口直しに爽快な映画でもと、宍戸錠の西部劇アクションを観ることにした。
日本でないだろうというような無国籍で荒唐無稽な雰囲気がかえって面白い。渡辺武信さんによれば、この作品は徹底的に西部劇の骨法を踏襲しているらしく、西部劇ファンであればそこそこ愉しめるようなのだが、わたしには今ひとつピンとこなかった。
登場する埃っぽい町の雰囲気やアメリカ西部風の町並みから、先日観た二谷英明主演の「ろくでなし野郎」を思い出した。出てくる酒場などそっくりである。つまりは同じセットで撮影されたのではないか。映画の最初と最後に主人公が唄う歌が挿入されるところもまったく同じである。まるで兄弟みたいな映画だ。たしか「ろくでなし野郎」も1961年封切だったはず。
そう考えて61年のフィルモグラフィを調べてみた。61年2月の赤木圭一郎の事故死を受け、宍戸錠二谷英明が主役級に昇格するわけだが、この二人が共演する作品「ろくでなし稼業」(未見)が同年3月12日に封切られている。そして4月1日にこの「早射ち野郎」が、23日に「稼業シリーズ」第2作の「用心棒稼業」、5月13日に二谷主演の「ろくでなし野郎」、6月11日に「稼業シリーズ」第3作「助っ人稼業」が封切られる。
わたしの予想では、宍戸・二谷共演の「ろくでなし稼業」が最初に作られ、次いでそれぞれが独り立ちして主役を演じる宍戸の「早射ち野郎」と二谷の「ろくでなし野郎」と「野郎」がつく二つに分かれるのではないかと考えていた。流れはそれでよさそうだが、双子のように「野郎」がつくタイトルに加え、「ろくでなし」が二谷主演作のほうに付けられている。この当時は二谷により期待が寄せられていたのか?
同じセットではないかと感じた「早射ち野郎」と「ろくでなし野郎」は一ヶ月ちょっと封切の間隔が開いている。幸いちょうど今月、チャンネルNECOで「稼業」三部作が放映されるので、この西部劇セットが他の映画にも使い回されているのかどうか、確認してみよう。
最後に、無理矢理この映画の社会的背景を考えてみる。あの町はダム建設(「ろくでなし野郎」はパルプ工場建設)の景気に沸き、そこで働く人々が落とす金目当てに、山間の田舎に急ごしらえで出来上がったものである。高度経済成長期にある日本では、インフラ建設を契機に、何もない田舎に人が集まる盛り場ができるということがあり得たのだろう。カウボーイハットをかぶった男たちが馬に乗って蝟集し、拳銃をぶっ放すというのは非現実的だけれども、ある意味急造の盛り場に金や女を求める「ならず者」が集まってくるというところまでは、共感を得たのかもしれない。どうなのだろうか。