最後の対決は柔道で

「街の小天狗」(1952年、大映
監督吉村廉/原作甲斐克彦/脚本菊島隆三菅原謙二若尾文子/宮崎準/佐々木孝丸浦辺粂子/宇佐美諄/三條美紀(美樹)/見明凡太朗/杉丘毬子/石黒敬七

「〜の小天狗」というタイトルでは、別に「大学の小天狗」も録画している。同じ菅原謙二主演の大映作品だ。「小天狗」という言葉が流行っていたのだろうかと“日本映画データベース”で調べてみたら、1951年から52年にかけ、「飛騨の小天狗」「大学の〜」「街の〜」と菅原謙二主演でシリーズのように製作されたらしい。
そもそも「小天狗」とは今では聞き慣れない言葉だ。『日本国語大辞典 第二版』で調べてみると、「小さい天狗」という第一の語釈に次いで、「からだの小さい若者で、武芸にすぐれた者」という意味があるらしい。こちらだろう。とはいえ菅原謙二は小柄ではない。
菅原謙二と親友の宮崎準は警視庁捜査一課の刑事で、二人はすぐれた柔道選手であることを見込まれ警視庁に入ったらしい。菅原は宮崎の家に下宿している。宮崎の母親役は浦辺粂子
菅原が偶然出会った男が脛に傷持つ男で、菅原が刑事と知るやその前から姿を消し、その後絞殺死体となって発見される。この謎の男を殺害した犯人をめぐる一種の刑事サスペンスと言える。もともと若尾文子特集で放映された作品なのだが、この映画での若尾文子は、主演というより菅原謙二主演作の相手役(菅原にほのかな好意を寄せる近所住まいの看護婦)といった扱い。後年はこの立場が逆転することになる。
犯人というのが佐々木孝丸で、いままで見た佐々木孝丸登場作品のなかで、一番出番が多かったような気がする。柔道六段の手練れであり、菅原の親友宮崎を絞め技で殺してしまうのだ。ラスト、房総の砂浜で菅原と対決するが、柔道で格闘するというのも面白い。波打ち際で袈裟固めをする菅原。逆に絞め技でおとされそうになる寸前、逆転の投げで佐々木孝丸は気絶してしまい、手錠をかけられる。
道家石黒敬七が特別出演しているが、出演場面にわざわざ「石黒敬七」と字幕が出てしまうところがすごい。柔道大会のシーン、いまでは技ありとも有効ともとれるような技をかけられたのに、審判は何も反応しない。そもそも「有効」のような判定がいつできたのか知らないが、昔の判定はいま以上に厳しかったのかもしれない。