ラブロマンスの代わりに義兄弟愛

「清水の暴れん坊」(1959年、日活)
監督松尾昭典/脚本山田信夫松尾昭典石原裕次郎北原三枝芦川いづみ赤木圭一郎清水将夫近藤宏金子信雄西村晃内藤武敏/松下達夫

「明朗アクション」に分類される作品か。このあいだ観た「山と谷と雲」よりは良し。石原裕次郎と「新人」赤木圭一郎の共演作。そこに北原三枝芦川いづみという豪華配役。
石原が学生時代に命を救った幼い姉弟が芦川・赤木で、赤木は石原を兄貴と慕っている。この映画の紹介文などでは石原と赤木が兄弟役と書かれているものもあったような気がするが、たんに赤木が石原を「兄貴」と呼んでいるだけで、血のつながった兄弟ではない。
石原は放送局の記者で、清水から東京に転任したところから始まる。石原は市会議員を殴るという事件を起こしたため、清水から異動させられたのである。社員寮(渋谷鉢山の豪華な屋敷)に帰る途中の蕎麦屋で、間違ってリュックに麻薬を入れられたことから、麻薬密売ルートの特番を作ろうと奔走する。
石原が間違えられたのは赤木であり、赤木は恩義のある金子信雄の傘下で麻薬の受け渡しをするチンピラになっていた。ストーリーは赤木を軸に、金子の組織と石原が対決するという流れ。西村晃はまたしてもインチキ中国人で金子より上のボスだが、ワンシーンしか登場せず、もったいない。
北原三枝芦川いづみという二大女優が出演しているにもかかわらず、この映画にロマンス色は薄い。北原は石原の同僚だが、芦川が石原に憧れを抱いていることを見抜き、自分は一歩引く。といっても芦川が石原と結ばれるというわけではない。やはりこの映画は石原と赤木の「義兄弟愛」がセールスポイントなのだろう。