水曜日は人情喜劇
- 監督 川島雄三の世界@日本映画専門チャンネル(録画DVD)
- 「青べか物語」(1962年、東京映画)※二度目
- 監督川島雄三/原作山本周五郎/脚本新藤兼人/森繁久弥/東野英治郎/左幸子/フランキー堺/千石規子/山茶花究/乙羽信子/左卜全/丹阿弥谷津子/中村メイ子/池内淳子/加藤武/桂小金治/中村是好/市原悦子/紅美恵子/富永美沙子/園井啓介/小池朝雄/名古屋章/南弘子/桜井浩子/東野英心/井川比佐志
川島雄三映画は人気があるのだなあ。ケーブルテレビを入れてから、今年衛星劇場でやっている「初期作品集」以外特集らしい特集はやられていないのに、何かしら放映される機会が多く、その都度録りためているので、結構それなりのライブラリーができつつあった。
そこにきて今月から、日本映画専門チャンネル・衛星劇場共同企画として、3ヶ月連続の川島雄三特集が始まった。観たいと思っていた「風船」「箱根山」や、ぜひともDVDに保存しておきたかった「洲崎パラダイス 赤信号」などもラインナップに入っているから、楽しみでしょうがない。
この特集で最初に観たのがこの「青べか物語」である。3年ほど前に新文芸坐の森繁特集で観て以来二度目。白黒映画のイメージがあったけれど、カラーだったか。前回観たときの記憶がまだ残っていたこともあってか、前回強い印象に残った、老船長左卜全をめぐる悲恋エピソード、森繁が間借りしている家の山茶花究・乙羽信子夫婦のエピソードにはふたたびぐっとくる。過去の罪を背負い静かに生きる男山茶花究。
森繁のナレーションによって物語が進行していくが、森繁出演場面でも森繁に台詞を喋らせず、相手の台詞とナレーションでそれを埋める手法が珍しく感じる。出演者たちの饒舌なやりとりがそれによって引き締まる感じ。
前回の感想では、名古屋章と丹阿弥谷津子に「気づかず」というコメントを付していた。名古屋章は小池朝雄の貝盗人を見咎める監視人の役だが、今回も小池朝雄だけに目を奪われ、相手が名古屋章であることをうっかり確認しそこねた。逆に丹阿弥谷津子はわかった。娘(南弘子)を捨てて男と駆け落ちした女の役で、娘はそのまま浦粕の町に乞食同様に居つき、赤ん坊をこしらえる。
逃げた先で落ち着いたので娘を引き取りにきた丹阿弥に、娘は恨み言を吐き、それを言いたいがために浦粕に残っていたのだと、同行を拒否する。最後彼女は森繁に別れを告げ、赤ん坊と二人で浦粕を去ってゆくのである。二度目の今回は、このエピソードにも惹きつけられた。上品な女性役が多い印象のある丹阿弥さんには珍しい汚れ役である。