天知茂の嫉妬執心焦燥

「スター毒殺事件」(1958年、新東宝
監督赤坂長義/天知茂/万里昌代/江見渉/三原葉子/城美穂/沼田曜一/江川宇禮雄

天知茂は映画俳優。将来結婚を誓っていたような後輩の女性万里昌代を自分の所属する映画会社に女優として推薦したら、めきめきと頭角を現し、そのうえライバルの二枚目俳優(江見渉)に奪われてしまう。
嫉妬に狂いつつ、なお彼女をあきらめきれずつきまとう天知に、スター女優となった万里は冷たい。眉間にしわを寄せて怒りをあらわす天知。彼は江見と万里共演の映画に使う小道具であるウイスキーを毒入りのものにすり替える。気絶した万里を、ウイスキーを口に含ませ、口移しで呑ませるというシーンで、最初にウイスキーを口にした江見が死に、万里は入院することに。
この事件を疑った助監督の沼田も殺害し、最後には万里も殺してしまうのだが、警察に追いつめられ、車で東京を逃げ回った果てに天知が入り込むのは地下鉄の工事現場だ。車が走り回る場所がどこか特定できないのがくやしい。また地下鉄工事現場は、これがセットであるならばあれこれ考えるのは無駄なのだけれど、いかにも地下鉄駅構内の雰囲気が出ていて本物っぽい。
もしセットでないのならと調べてみる。可能性があるのは、東京メトロ丸の内線(54年一部開業、62年全線開通)、同日比谷線(61年開業、64年全線開通)、都営浅草線(60年開業)の三つ。こういうことに協力的なのは、意外に都かもしれない。