映画も一緒に

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「三文役者」(2000年、近代映画協会
監督・脚本新藤兼人竹中直人/荻野目慶子/吉田日出子乙羽信子桂南光波乃久里子二木てるみ倍賞美津子田中要次堀川弘通川上麻衣子原田大二郎東郷晴子原ひさ子今村昌平神山征二郎

原作を読んだからには映画も観ておかねばならないと、さっそくレンタルしてきた。ところがところが、雑事に追われている間に早いもので期限が来てしまったことに気づいたのは、最終日の真夜中。仕方ないので一日明けた早朝に観て、一日分の延滞料金を払った。
殿山さんが出演した新藤映画をところどころに挿入しながら、また、画面の外の乙羽信子が、中で演じている竹中直人と会話を交わしながら物語が進行してゆく。鎌倉の奥さんが吉田日出子で、京都の女性が荻野目慶子。竹中直人扮する殿山泰司は、風貌以上にその話し方、口跡がわたしの記憶にある殿山泰司のそれにそっくりで、また、そんな語り口そのままに綴られた著作の文体をも思い出させるもので、なかなかのものだった。
荻野目慶子が帰宅した竹中を全裸で出迎え、黒々としたヘアを露出しているシーンには意表をつかれてしまったが、それよりも驚いたのが豪華特別出演陣。ラストのスタッフロールで初めて知ったことながら、新宿ゴールデン街でラーメン屋を営んでいる老婆に東郷晴子とあったのは最大の驚きだった。何か気になるおばあさんだなあと思っていたが、東郷晴子さんといえば、成瀬巳喜男監督の「驟雨」における、原節子と近所づきあいのある上品な奥様ではないか。殿山さんが愛してやまなかったという神戸に住む生母の役が原ひさ子さんというはまり役とあわせて、へんなところで感心つづきの映画だった。
本のほうには、殿山さんの死の直後から映画の準備をしていたが、乙羽さんの病気により「午後の遺言状」を先に撮ったとあった。「午後の遺言状」が乙羽さんの遺作となっているはずだが、「三文役者」に登場する乙羽さんはどういう扱いになるのだろう。「午後の遺言状」より先に撮影は済ませていたということなのだろうか。
三文役者 特別編 [DVD]