ひろいよみ夢声日記(1)

岩田牡丹亭と錦城出版社を訪れ、ブラブラ清水谷から四谷へ出る。松葉屋でニッカ一本手に入れる。牡丹亭は葡萄酒を一本。元日約束のサント十二年をとりに牡丹亭荻窪まで来る。仏印コーヒーを入れる。「南の風」に仏印コーヒー礼讃を書いたが、実物はこれが始めてと牡丹亭。(テキストは中公文庫版『夢声戦争日記(一)』)
昨日のロッパ日記と同じ日付。岩田牡丹亭とは、岩田豊雄すなわち獅子文六。この日赤坂で岩田・夢声近藤日出造三人で「新映画」誌の座談会があったその帰りの出来事。
昨日は、対米開戦直後には大都市ですでに食糧不足が始まっていたと、それまでの認識を改めたように書いた。ところが古川緑波永井荷風二人の日記から一般的状況を普遍化するのも拙速だったようだ。
たとえば前日30日、浅草花月劇場に出演中の夢声は、公演の合間に立食いすし屋で「ひらめ、こはだ、えび。海老甚だ堂々たるもの、てんぷらにしたらばと想う」という食事をとっている。
結論。「あるところにはあった」。