ため息のでる豪華キャスト

「樅ノ木は残った」(1970年、NHK大河ドラマ)総集編第一部・第二部
 

映画ではないが便宜的に[映画]のカテゴリーで書くことにする。TSUTAYA半額レンタルだったので、せっかく先日原作を読んだのだからと借りてきた。
NHK大河ドラマで一年通して観た最初は、1977年の「花神」(司馬遼太郎原作)だった。中村梅之助大村益次郎。前年の「風と雲と虹と」(加藤剛平将門)もかすかに記憶にあるのだが、一年通して観たのではないはずだ。当時10歳(小学校4年生)で、この翌年の「黄金の日々」、翌々年の「草燃ゆる」とつづけて大河ドラマに夢中になったことが、いまの職業につながっているのかもしれない。
小学校で同じクラスの女の子が、「黄金の日々」の主役呂栄助左衛門を演じた市川染五郎(現松本幸四郎)の目の窪み具合とそっくりで、彼女に「助左」というあだ名をつけ、それが周りにも受け入れられていたのだから、ずいぶん高級な趣味を持っていた小学生どもだった。
だから当然この「樅ノ木は残った」の記憶はない。いまビデオで観ると、そのあまりの配役の豪華さにため息をもらしてしまう。いまから34年前の大河ドラマである。以下配役を書き上げてみたい(括弧内は役名)。

平幹二朗原田甲斐
ラスト酒井雅楽頭邸で殺害された時、血だらけになりながら畳を這って伊達安芸に近づく表情が鬼気迫る。
吉永小百合(宇乃)
騒動初期に父を殺され、甲斐にかくまわれ、甲斐を慕う少女役。
田中絹代(津多)
甲斐の母親役。気品にあふれる。
森雅之伊達安芸
完全な老け役。「ご老公様」という雰囲気。史実では甲斐に殺害される人物。
佐藤慶(伊達兵部)
伊達家乗っ取りをたくらむ政宗の末子。若い。
香川京子(くみ)
江戸湯島の妾宅で甲斐に囲われる女性。
芥川比呂志(なにがし様)
原作にない。仙人髭を生やし山中で暮らす医師の役。
宮口精二(原田民部)
回想シーンで登場する甲斐の父役。総集編では死顔と声のみ。
志村喬(里見十左衛門)
甲斐の真意を理解できず落ちぶれる老藩士役。
伊吹吾郎(伊東七十郎)
同じく真意を理解せず、自力で兵部を殺そうとして捕えられる。このドラマでは「荒魂」を担う。
岡田英次(久世大和守)
老中の一人。
高橋昌也(茂庭周防)
甲斐が心を許す唯一の同輩。
金田龍之介(新妻隼人)
兵部の腹心。
下條正巳(河野道円)
幼君亀千代を毒殺せよと兵部から命じられる医師。
栗原小巻(たよ)
甲斐の最初の恋人。百姓で身分を超えられず不幸に見舞われる。原作にはなかったはず(かわりに別の人物設定がある)。
花沢徳衛(与五兵衛)
たよの父。
山本耕一(村山喜兵衛)
甲斐の片腕。
澤村精四郎(宮本新八)
藤十郎。まだ少年の顔つき。兄(蜷川幸雄)を騒動初期に殺され出奔。
日下武史(柿崎六郎兵衛)
宮本新八をかくまう酒飲みの浪人剣士。
佐藤友美(みや)
六郎兵衛の妹で、新八を慕う。仙台が縁なのか。
吉行和子(のぶ)
宇乃(吉永小百合)の母役。夫を追って殺害される。顔が篠原涼子に似ている。
三田和代(律)
甲斐の最初の妻。この人は知らない。
尾上菊之助伊達綱宗
菊五郎。吉原通いで隠居を命じられる青年藩主。若いなあ。三津五郎の雰囲気に似ている。現菊之助は父の若い頃に似ていない。母親似ということなのだろうな。
坪内ミキ子(遊女薫)
綱宗が入れあげる花魁。
北大路欣也(酒井雅楽頭)
幕府の最高権力者。甲斐の敵役。やっぱり若い。
加東大介(善左衛門)
甲斐死後に前妻律と登場。原作にあったかわからない。
藤岡琢也(雁屋信助)
くみ(香川京子)の兄。
水野久美(伊久)
甲斐の後妻。
若林豪(古内志摩)
仙台藩の家老。酒井雅楽頭邸ではこの人だけ生き残る。
名古屋章(政右衛門)
甲斐死後、屋敷を出る津多(田中絹代)の後ろにちらりと見えるだけ。
近藤正臣(伊東采女
七十郎(伊吹吾郎)の甥で、兵部謀殺の陰謀を事前に妨げられる若殿。
辰巳柳太郎(洞水)
瑞巌寺和尚。甲斐死後、宇乃(吉永)と残った樅ノ木を見つめる。

平幹二朗佐藤慶はもちろん、北大路欣也吉永小百合らいまも活躍する俳優にくわえ、田中絹代森雅之志村喬芥川比呂志宮口精二加東大介らががっちりと脇を固めている。いつの時代も大河ドラマは豪華配役が売りだが、昔のそれを観ると今の比ではないことがわかる。