個性派脇役二人の衝突

「気違い部落」(1957年、松竹大船)
監督渋谷実/原作きだみのる伊藤雄之助淡島千景水野久美山形勲石浜朗清川虹子賀原夏子伴淳三郎森繁久弥

原作も気になっている本なのだけれど、この書名では再刊は無理なのだろうな。
村のボス的存在と対立したために村八分同様の扱いを受けた家族の悲劇。これがきちんとした村八分(そういうものがあるかどうかはわからぬが)ではなく、なし崩し的なものだったため、病死した娘の弔いすら手伝ってもらえない。結核で娘(水野久美)を亡くした母親(淡島千景)の絶唱。群像劇のわりにストーリーは単線的で2時間15分が長く感じる。
この時期の映画で脇役として欠かせない存在である伊藤雄之助山形勲(=ボス的存在)が主役級で衝突する。けっこう似た雰囲気のある個性派二人の衝突に迫力あり。
伊藤雄之助を見ると嶋田久作を思い出す。二人とも長い顔が特徴的な俳優だが、その独特の風貌のわりにさまざまな役柄を演じ分ける器用さも共通しているように思う。伊藤雄之助の場合、今回の孤立した頑迷な百姓、「バナナ」での「インチキくさい」(byふじたさん(id:foujita))支配人、「放浪記」の文士など、いずれもピタリとはまっているのである。