ひろい読み断腸亭日乗(10)

八月十七日。晴。法師蝉始て鳴く。夜銀座に飯す。帰途芝兼房町の巡査派出所に人多く佇立むを見て、何事ならむと立寄り、様子をきくに、女子に化けたる男この辺のカフヱーに女給となりて住込みゐたる事露見し、派出所より愛宕町の警察署に引かれ行くところなり。今の世の中はます\/わけの分らぬ世の中とはなれり。
カフェーの女給になりすました男はどのようにして住み込みの日常生活を送っていたのか、興味津々なり。