2005年読んだ本

旅先でビール

山形の実家に帰省したところ、実家のパソコンがネットにつながらないというトラブルにでくわし、しばらくネットの世界に遊ぶことができなかった。ようやく解決したので、旧年中にまとめていた「2005年に読んだ本」のリストをアップしようと思う。
どんな本を「面白い本」と規定するか。これまで様々な機会に触れてきたことではあるけれど、いまあらためて書いておきたい。わたしの場合、次の二つのポイントに重きを置きたい。
ひとつは「次へ次へとページをめくらせる力を持った本」だ。本を閉じるのが惜しくなるほど、読む者を惹きつける力を持った本、夢中にさせる本と言えるだろう。いまひとつは、「読み進むのが惜しくなる本」だ。閉じるのが惜しいのではなく、次へ次へと読み進んでしまい、読み終えたくないような本である。この二つのポイントは相反する意味合いを帯びているが、反発しあう力が大きければ大きいほど、自分にとって面白かった本ということになるのだろう。「読み終えたくないのだけれど、次へ次へと読まずにはいられなくなる本」に出会ったとき、無上の喜びを感じる。
今年読んだ本でそうした要素を多少なりとも持っていた本を思い出せば、以下のようになる。( )内はその月に読んだ冊数、★は2005年の新刊である。

12月の読了本冊数は東京のPCにデータがあるので、戻ってから補足したい。
以上並べてみて思うのは、後半になるにつれて読了本が少なくなっていること。秋口からいろいろな事情で「(古)本離れ」「ネット離れ」になったことが大きい。とくにネット離れは深刻で、PCのある部屋に冷暖房がなく、真夏・真冬はネットから遠ざかる傾向があるとはいえ、この冬はさらにそれが顕著だった。
★印が付いた本のなかで印象に残った本をさらに絞り込めば、堀江敏幸『河岸忘日抄』、濱田研吾『脇役本』、浅田次郎椿山課長の七日間』、小林信彦東京少年』、川本三郎『旅先でビール』あたりが該当する。
このうち『脇役本』は、上記二つの要素は必ずしも強くないのだが、映画趣味とあいまって何度も何度もめくり返し、そのつど新しい魅力を発見した本という意味で、別格に位置づけられる。
ということで、上記二つの条件を満たした「ベスト・ブック・オブ・ザ・イヤー」は、小説では浅田次郎椿山課長の七日間』、エッセイでは川本三郎『旅先でビール』を躊躇なく選ぶ。このうち『椿山課長の七日間』は文庫化だから純然たる新刊ではない。したがって今年もまた川本三郎さんのエッセイ集を選ぶこととなってしまった。
たしか一昨年は『東京の空の下、今日も町歩き』、昨年は『我もまた渚を枕』で、今年もまた似たような内容の『旅先でビール』に強く惹かれることになった。ここ数年のわたしの読書、散歩、映画、酒、食といった趣味嗜好は、完全に川本三郎さんの影響下にあると言って過言ではない。

年末に山形で購った本

今東光河内カルメン』(徳間文庫)
カバー、300円。鈴木清順監督の映画は録画しておいたのだが、未見。ISBN:4195975441
小林信彦『コラムにご用心』(ちくま文庫
カバー、105円。ISBN:4480030298
庄野潤三『孫の結婚式』(講談社
カバー、900円。エッセイ集。ISBN:4062113333
  • 香澄堂書店
庄野潤三『早春』(中公文庫)
カバー、400円。あまり見ない本であること、本書が神戸を舞台にしているということで、大阪を舞台にした『水の都』と対になっていることから購入。河出文庫版『水の都』は以前購っていた。ISBN:4122012988
小林信彦『ドジリーヌ姫の優雅な冒険』(文春文庫)
カバー、400円。
小林信彦『中年探偵団』(文春文庫)
カバー、400円。上の『ドジリーヌ姫の優雅な冒険』とともに、なぜか古本屋ではあまり見ない(これはわたしの個人的な体験にすぎぬが)本である。
都筑道夫『悪夢図鑑2 感傷的対話』(角川文庫)
カバー、300円。ショート・ショート集。たしか持っていないはずだ。
都筑道夫『悪業年鑑1 スリラー料理』(角川文庫)
カバー、300円。ショート・ショート集。これもたしか持っていないような気がするが、上の『感傷的対話』より自信がない。そろそろ都筑さんの未所持文庫本をチェックしておかねばならない。
都筑道夫『妄想名探偵』(講談社文庫)
カバー、300円。連作ミステリ短篇集。これも持っていないと思うのだが、カバーを見ていると、見覚えがあるような…。ISBN:4061831704
山藤章二『イライライラストレーション』(新潮社)
カバー、700円。昨夏この店を訪れたときからあって、そのときも気になったのだが、我慢していた。そのときよりは懐に余裕があったので、思い切って購入。仁丹のシリーズ広告として書かれ、描かれた画文集。現代のイライラを表現するというテーマで、モデルはCMにも起用されたという田中邦衛さん。シリーズ広告が本になるなんて、珍しい経過をたどっている。