2003-12-01から1ヶ月間の記事一覧

アンソロジーの愉悦

講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見15 笑いの源泉』*1(講談社文芸文庫)を読み終えた。このシリーズは第一期全10巻、第二期全8巻で現在も刊行中、いちおう継続購入している。第二期の最初に出た第11巻「事件の深層」を一時読み始めたが、何篇か読んで挫…

物語の衣装を取り払う

北上次郎さんの『うろたえる父、溺愛する母―19世紀小説に家族を読む』*1(筑摩書房)を読み終えた。本書は副題にもあるように、19世紀の海外の小説を読み、「困ったものだ」とつぶやきながら、そこに描かれたさまざまな家族像を抽出するという内容となってい…

病気至上主義あるいは一病息災の思想

急に身体の具合がおかしくなった。そういうとき、ネットで自分の症状と似た事例を探す。「そうそう、これこれ」。ピタリとあう症状を見つけて他人の体験談を読むと、同志を見つけた嬉しさで自分の苦しみが相対的に減じたように感じ、気が休まることがある。…

仙台にて

仙台では総じて東京で見ないような古本が多い。嬉しい収穫がたくさん。 愛子開成堂書店 ★獅子文六『コーヒーと恋愛(可否道)』(角川文庫) ダブり。モシキさんへのプレゼント。190円。 ★山本夏彦『恋に似たもの』(中公文庫)ISBN4122026873 文春文庫版既…

痛すぎて涙がとまらない

出張先で重松清さんの『流星ワゴン』*1(講談社)を読み終えた。こころの表面にある痛点をむき出しにされてそこをチクチクと刺されるような、読みながらずっとそんな疼痛をおぼえさせられる物語だった。 主人公は38歳。会社をリストラされたばかり。妻はテレ…

文章読本の読み方

「文章読本」といえば谷崎潤一郎・川端康成・三島由紀夫のそれをまず思い出す。これに一昨年読んだ丸谷才一さんの『文章読本』*1(中公文庫、感想は2001/8/30条)が加わる。谷崎のそれは読んだように記憶しているが、定かではない。川端・三島バージョンはも…

連作漬けの日々

これまでいく度となく繰り返し表白してきたが、私は「連作(短篇集)」好きである。単なる短篇の寄せ集めでなく、同一主人公・登場人物ではあるが作品ごとに独立して読めるような(しかし続けて読めば面白さは倍増する)短篇の集合体、統一的なテーマを縦軸…

縦のものを横にする

キーボードを前に文章を考えるようになって15年ほどになる。世の中の移り変わりに応じて目の前の機械がワープロ専用機からPCへ変わったとはいえ、基本的にキーボードを叩いて文章をひねりだすというスタイルに変化はない。ペンの運動が思考を生みだすという…