小林旭と芦川いづみ

「やくざの詩」(1960年、日活)
監督舛田利雄/脚本山田信夫小林旭芦川いづみ南田洋子二谷英明和田浩治金子信雄垂水悟郎内藤武敏

やくざの詩 [DVD]小林旭芦川いづみという組み合わせは珍しくないか?」と心動いたので観ることにした。“日本映画データベース”小林旭共演者別リストで見ると、二人の共演作は8作品あって、別に少ないわけではない。ただ浅丘ルリ子の42作品と比べると断然差がある。加えて共演作といっても、川島雄三監督の「幕末太陽傳」まで含まれてしまうので、主演男優・女優としての共演ではない。だからこの「やくざの詩」は珍しい部類に入る作品なのかもしれない。
恋人を射殺された元医師の男(小林旭)が、犯人を見つけその仇を討つため、恋人の体に撃ち込まれた銃(レアな型)の弾丸をペンダントにして持ち歩いている。
その犯人というのが、これまでほとんど気にすることのなかった垂水悟郎という俳優さんで、この作品で初めて意識した。その熱演に思わず身を乗り出す。渡辺武信『日活アクションの華麗な世界』*1(未來社)をめくってみたら、「暗い雰囲気を発散させつつ好演した」とあって、頷いた。渡辺さんはこの作品を高く評価している。いったいに渡辺さんは舛田利雄監督作品がお好きなようだ。
垂水の兄が拳銃ブローカーの二谷英明で、小林旭にシンパシーを持っている男。彼は自分の不注意で弟の右腕を怪我させ、義手にさせてしまったという負い目をもっている。このようなハンデを媒介にした微妙な兄弟関係がなかなかいい。
垂水は左利きの拳銃の名手ということになっているのだが、彼がビルの屋上から地上にいる小林旭の左手を狙撃するシーンが印象的だった。背後で子どもたちが遊んでいるのだが、飛行機が上空にやってきたときに、その騒音に紛れて狙撃するのである。
怪我した小林の左手を治療してやるのが、飲んだくれ医師の金子信雄(白髪交じりの老け役!)で、娘がインターン芦川いづみという設定。でもこの映画の芦川いづみはちょっと精彩がなくて、芦川ファンとしては残念だった。
和田浩治は幼い石原裕次郎という印象。