気になる脇役

「銀座の次郎長」(1963年、日活)
監督井田探/小林旭/笹森礼子五月みどり/小川虎之助/中村是好桂小金治/杉山俊夫/嵯峨善兵/藤村有弘/由利徹
「銀座の次郎長 天下の一大事」(1963年、日活)
監督井田探/小林旭松原智恵子畠山みどり/小川虎之助/中村是好桂小金治/杉山俊夫/藤村有弘/坊屋三郎井上昭文

前回第三作まで観た(→2/10条)、小林旭の「銀座の暴れん坊」シリーズの残り二作。
監督が井田探に変わり、ヒロインも浅丘ルリ子ではなくなる。この点「若い頃の浅丘ルリ子好き」としては惰性になってしまう一因になりかねないが、意外に両作品とも面白かった。どちらも、第三作「夢がいっぱい暴れん坊」の流れを汲んで、小林旭の父親役中村是好と、杉山俊夫の父親役桂小金治が大活躍する。
第四作では、銀座の商店街へ田舎(なんと山形の真室川!)から集団就職の斡旋するため二人が真室川に派遣され、真面目な田舎の若者をスカウトするが、途中でヤクザに欺されて柄の悪い若者を送り込まされてしまう。
ヤクザには全国ヤクザ連合会(!)のような組織があり、その東京支部長に、矢野誠一さんの近著『酒場の藝人たち―林家正蔵の告白』*1(文春文庫、→1/25条)で印象に残った嵯峨善兵なのである。最後にヤクザから足を洗い、銀座のネズミ取り稼業に転身する。そう、この映画では冒頭、銀座の飲食店から出る生ゴミゆえにネズミが急増して困っているという話題から入るのである。そういう時代があったのだなあ。集団就職といい、時代を感じさせる。
時代を感じさせるといえば、最終作もそうか。この作品では、全国にある「銀座」と名のつく繁華街を富士山麓に移住させてしまおうという途方もない計画が物語の中心となる。もちろんこの裏には例のヤクザ組織がいるのだが、中村是好桂小金治コンビは、富士山麓のいい場所に「東京の銀座」を移転させようと、土地買い占めのおいしい話に欺される。この映画でのゲストは坊屋三郎。坊屋は東北弁、その妻は関西弁という変な組み合わせ。また、中村是好が「小さな親切運動」に熱心で、新聞に取り上げられようと躍起になる。これもまた60年代前半という時代性なのか。
鹿島茂さん的な「第三人格」がうかがえる俳優をこのシリーズから探せば、どの映画にも多様な、そして胡散臭げな人物を演じた藤村有弘が筆頭か。個人的には野呂圭介が気になる。わたしたちの世代にとって野呂圭介と言えば、かの「どっきりカメラ」で最後に看板をもって現れる人物としての印象が強い。というか、それでしか知らない。このシリーズを見て、野呂圭介は日活の脇役俳優だったのだなあと印象を新たにし、記憶に残った。