ああ幻の中原弓彦脚本映画

「進め!ジャガーズ 敵前上陸」(1968年、松竹)
監督前田陽一/脚本中原弓彦小林信彦)・前田陽一ザ・ジャガーズ中村晃子てんぷくトリオ三波伸介戸塚睦夫伊東四朗)/内田朝雄/三遊亭円楽

この映画の存在を知ったのは、昨秋三百人劇場での前田陽一監督の特集上映(「社会派コメディの変遷 渋谷実前田陽一」)だった。小林信彦さんが脚本を書いた映画であることをふじたさん(id:foujita)に教えていただいたのである。しかし私は前田監督の映画は一本も観ず、渋谷実監督作品を観ることだけに終始した。
直後、小林信彦さんがこの映画にまつわる出来事を小説化した「根岸映画村」(中公文庫・講談社文芸文庫『袋小路の休日』*1所収)を読み、映画を観るのだったと悔しがったがあとの祭り。このことについては『袋小路の休日』を読んだときにも書いた(→2004/11/24条)。
この春ケーブルテレビを入れた。導入日から一定期間有料チャンネルも無料で視聴でき、たまたまその期間に「衛星劇場」でこの映画が放映されたのである。大喜びでHDDレコーダーに録画したのは言うまでもない。それから2ヶ月が経過したいま、ようやく観ようという気持ちになった。
わたしは主演のザ・ジャガーズというグループは知らない。でも、作品中ボーカル(岡本信)が「♪若さゆえ〜」と唄うシーンがあって、この歌が彼らの曲であることを知った(曲名は「君に会いたい」というそうだ)。
てんぷくトリオが出演しているが、とりわけ伊東四朗(若い)がおかしい(怪演と言うべきか)。この頃から小林信彦さんと伊東四朗さんの結びつきがあったわけだ。円楽師匠がなぜかキザな警部役として出演。これこそ怪演である。
観はじめて30分を過ぎたあたりで、敵側のくりだしたビキニ姿の女性殺し屋五人組のうちの一人に、故二子山親方の元夫人藤田憲子さんが出演しており、「おおっ、すごいすごい」と興奮していたら、突然画面が真っ暗になった。早送りしても画面は元に戻らない。
どうやら何かの不都合で録画に失敗したらしいのである。いまとなっては原因はわからない。またしても悔しさに涙をのんだが、いっぽうで、「またいずれ観る機会もあるさ」と冷静に事態を受けとめる自分もいる。大人になったなあ。ただ、前記「根岸映画村」のこんな一節を目にすると、どうにも悔しさがこみあげてくる。

前半はテンポが悪かった。いかに脚本を改変されたとはいえ、責任は自分にある、と宏は感じた。後半からクライマックスの要塞島にかけては快調で、監督の喜劇的才能の迸りをいやでも認識させられた。(講談社文芸文庫版、124頁)
「テンポが悪」いという前半(しかもたった30分)でも、そこそこギャグが散りばめられ笑えただけに、やはりこの録りそこないはもったいなかった。