大きな勘違い

通勤電車で「アール・デコ展」のポスターを見かけたので、これは行かねばと頭の中にメモした。会場は「東京都○○…」とあったので、考えるまでもなく、「アールデコの館」たる旧朝香宮邸、つまり東京都庭園美術館だと思い込んだのである。
ふじたさん(id:foujita)が先日観に行かれたと書かれていたが、国立西洋美術館で開催中の「ラ・トゥール展」に行く予定を急に変更して(同じ上野にある)東京都美術館アール・デコ展」に行かれたとあった。
ここで「東京都美術館」とちゃんと書かれていたにも関わらず、わたしは「何かの間違いだろう。上野からわざわざ白金まで行ったのか」と、ここにいたってもまだ自分の勘違いに気づかないおめでたさ。
長男の「東京メトロスタンプラリー」に付き合いがてら、白金の庭園美術館の入り口まできて、いま同館で開催しているのが「アンソール展」であることを知った。それでもわたしは最初、「あれ? アール・デコ展はもう終わったのか」などととぼけたことを考えていたのである。考えること数秒、ようやく会場を勘違いしていたことに気づいた。バカである。
せっかくここまで来たのだ。仕方ない。アンソールのことはよく知らないが、耳にしたことがないわけでもない。ルネ・マグリットポール・デルヴォーと並びベルギー近代美術を代表する三大画家の一人と言われているらしい。この二人ならわたしも大好きな画家だ。ポスターの骸骨と道化が描かれている絵(「仮面と死神」)も何となく気になる。そもそも庭園美術館の建物の中に入ることも楽しみで訪れたのだ。意を決して入ることにする。
ただ入館料が一般1200円と高すぎる。旧朝香宮邸の維持費込みだと自分に言い聞かせる。子どもがいると絵を集中して見ることができないが、これも仕方がない。アンソールの絵は、描かれている図柄の禍々しさにくらべ、色づかいが明るく何とも不思議。「北斎漫画」を模写した「シノワズリー」と題された連作素描がユニーク。
朝香宮邸は何度来てもため息が漏れる豪華さ。とりわけ書斎と書庫。ただ、円形に突き出た二階の部分を使った書斎は、すこぶるスタイリッシュではあるけれど、ちょっと落ち着かなそう。昭和初期(建てられたのは昭和8年)、日本にはこんな豪華な生活があったのだなあ、それを美術館というかたちにせよ残してくれて、見ることができるのは嬉しいものである。