人生は楽しく美しい

我が家は楽し」(1951年、松竹大船) ※二度目
中村登監督/田中澄江脚本/笠智衆山田五十鈴高峰秀子岸惠子佐田啓二/高堂国典

朝の時点では、いい映画だけれど一度観たことがあるし(→2/14条2/18条)、今回はいいかなと行く気持ちが萎えていたのだけれど、出勤して仕事をしているうち、ぷつぷつとあぶくのように「観よう」という気持ちが心のなかに沸き上がってきて、結局観に行ってしまった。
今年2月以来8ヶ月ぶり二度目。ビデオで観ることができるとはいえ、こうした映画を一年に二度も観ることができる環境にいることは喜ばなければなるまい。
観終えて、「やはり観てよかった」と思える映画だった。山田五十鈴の慈愛に満ちた母親、美しい長女高峰秀子に、朴訥(これは地か?)ながらやさしい父親笠智衆。笠が勤続25年の表彰を受け金一封を頂戴した日、退勤後会社の前で妻と待ち合わせして高島屋に買い物に出かけ、子供たちへのプレゼントを買う。その後二人で居酒屋に入って祝杯を酌み交わす。前回の繰り返しになるが、このあたりまでのシークエンスが暖かくて素晴らしい。
これも前回の感想の延長線上にあるのだが、夫婦・親子の会話がとても丁寧で礼儀正しい。笠の一家は森永製菓の「万年課長」。四人の子供を抱え、妻も内職しなければならないという暮らし向きだが、これはごく一般的な中流家庭と考えていいだろうか。
映画というものが庶民生活の一資料たりうるならば、これを観て50年前の中流家庭では、現在の感覚で言えば「他人行儀」な会話をしていたと判断するのは軽率なのだろうか。あるいは実際こんな会話を交わしていたのだろうか。まあ「サザエさん」一家も家族の会話は丁寧だからなあ。
いずれにしても、現代はこの頃の夫婦・親子の間にあった礼儀正しさをまったく失った。私は50年前の礼儀正しさを羨んでいる。