非散文的な神代辰巳

「赤線玉の井 ぬけられます」(1974年、日活)
監督・脚本神代辰巳/原作清水一行/イラスト滝田ゆう宮下順子蟹江敬三/丘奈保美/芹明香江角英明絵沢萠子殿山泰司/粟津號

滝田ゆうさんのイラストがちりばめられ、何かで目にしたところでは滝田さんが考証にもタッチしたというから、玉の井の空間描写は文句の付けようがないのだろう。
一日で相手をした男の新記録に挑戦する丘奈保美と、ちんぴら蟹江敬三を愛する宮下順子、結婚して一度はカタギになったものの、また戻ってきてしまう芹明香、この三人の話が玉の井の娼家を舞台に並行的に描かれる。
先に観た「四畳半襖の裏張り」といい、神代監督はこうした手法が好みなのだろうか。筋らしい筋がなく、断片的なエピソードをつなげる。散文的というより詩的であり、通奏低音のように演歌のメロディが流れ、滝田さんのイラストが差し挟まれる。イメージが土俗的と言うのか、寺山修司に通じる前衛と言うのか。寺山修司ならまあそういうものだとはなから心構えができているからいいものの、そうでない場合、このようなイメージ連鎖の映画はちょっと苦手である。